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タクシー殺人、米兵逮捕 米軍から県警に身柄

2008年04月04日03時07分

 神奈川県横須賀市のタクシー運転手殺害事件で、県警は3日、米海軍横須賀基地所属のナイジェリア国籍の1等水兵オラットゥンボウスン・ウグボグ容疑者(22)を強盗殺人の疑いで逮捕した。ウグボグ容疑者は「事実に間違いありません」と事実関係を認めているという。

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横須賀署に入る容疑者の上等水兵(中央)=3日午後3時38分、神奈川県横須賀市、上田幸一撮影

 一方、同日夜に接見した弁護士によると、ウグボグ容疑者は「人を殺すつもりはなかった。タクシー料金を踏み倒すつもりもなかった」と犯意は否定しているという。

 同日午後に持ち回り形式で開催された日米合同委員会で、米側が身柄引き渡しを応諾。ウグボグ容疑者を基地から横須賀署に移した後、県警が逮捕状を執行した。起訴前に身柄が引き渡されるようになった95年以降、実現したのは今回で5件目。

 今後の司法手続きは、日本の制度にのっとる。ただ、殺人など凶悪事件の容疑者の身柄が起訴前に日本側に移された場合は米軍司令部代表者の立ち会いが認められているため、ウグボグ容疑者の取り調べにも、在日米海軍の法務官が立ち会う。

 調べでは、ウグボグ容疑者は3月19日午後9時20分ごろ、同市汐入町2丁目で、タクシーの車内で運転手高橋正昭さん(当時61)=東京都品川区東品川1丁目=の左肩を持っていた包丁(刃渡り約20センチ)で突き刺し、タクシー料金1万9560円を支払わなかった疑い。高橋さんを刺した後、走って逃げたという。

 県警によると、ウグボグ容疑者は同日午後7時半ごろ、東京・品川駅周辺でタクシーに乗って、「横須賀に行ってください」と伝えた。首都高などを経由して現場に着いたという。高橋さんの遺体発見時、料金メーターは「支払い」の状態で、運転席の足元にウグボグ容疑者名義のクレジットカードが落ちていた。

 車内に設置されたカードによる支払いに使う機器は、カードが使用不能だったことを示す表示のままで、県警は、ウグボグ容疑者がカードでタクシー料金を精算しようとしたが、使えずにトラブルになったとみて、高橋さん殺害の動機を調べている。

 関係者によると、ウグボグ容疑者は、艦内での金銭トラブルから外出を禁じられていたのに3月8日から行方不明になった。米海軍が10日に脱走兵と認定。その9日後に今回の事件が起きた。

 脱走兵として行方を追っていた米海軍犯罪捜査局が22日未明、東京・五反田で、自分から連絡してきたウグボグ容疑者を捕まえ、基地内で拘束していた。日本側の要請で今月2日にあった県警の任意聴取に対しても、ウグボグ容疑者は「私がやった」「『人を殺せ』という声が聞こえた」などと供述していた。

 ■市民権取得の近道

 ナイジェリア国籍の米海軍1等水兵オラットゥンボウスン・ウグボグ容疑者(22)は横須賀基地に配備されているイージス巡洋艦カウペンスの甲板員として、甲板の清掃など様々な仕事をしていた。

 関係者によると、ウグボグ容疑者は独身で、頭がよく暴力的なこととは無縁の青年だったという。

 米海軍のホームページによると、米国では永住権(グリーンカード)のある外国人居住者で、年齢や英語力など一定の条件を満たせば、一般兵士として軍に志願することが認められているという。ウグボグ容疑者もグリーンカードを持っており、07年2月に米海軍に入隊していた。

 ウグボグ容疑者のような米国の外国人兵採用は独立戦争時から続いている。基地内の大学への進学や将来の米国市民権(国籍)取得をにらんで、入隊する外国人も少なくないという。

 ブッシュ大統領が02年7月、対テロ戦争下で派兵が続き、負担が増大している軍への人材供給を促す目的で大統領令を出し、外国籍兵士の米国市民権取得について、居住年数の要件を撤廃するなど大幅に緩和した。

 米紙クリスチャン・サイエンス・モニターによると、この改革で02年に約2万8千人だった外国籍米兵は05年には約3万9千人に増大。このうち年に7千人が米国籍を取得しているという。イラクやアフガニスタンでの戦死者の中で、外国籍兵士はすでに3ケタに上っている。

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