拷問・戦争・独裁逃れ…在日女性60年ぶり済州島に帰郷へ2008年03月29日15時16分 東京に住む76歳の在日コリアン、金東日(キム・ドンイル)さんは31日、60年ぶりに韓国の済州島(チェジュド)に帰郷する。朝鮮半島が南北に分断された1948年に島で起きた民衆の蜂起で故郷を離れたままだったが、韓国で過去の見直しが進み、腰をあげる決心がついた。
東京都江戸川区の小さな弁当屋で、金さんは土日も休まず店に立つ。ずっと故郷に足が向かなかったのは多忙だけが理由ではない。「またつらい目にあわされるのではないか」という不安が消えなかったからだ。 48年4月3日に始まった済州島4・3事件だ。女学生だった金さんは、子どもにも容赦なく暴行を加える警察に反感をもち、山にこもった武装隊の伝令役として制服姿で島を走り回った。 軍や警察の包囲網が狭まり、山の洞穴に身を隠した。雪がつもり始めるころ山をおりたが、警察に見つかった。一緒にとらえられた年長の女性は銃殺。金さんも拷問を受けた。刑務所に移されるため、島から離された。 出所後、半島南端の木浦(モッポ)の叔父宅に身を寄せていた50年6月に朝鮮戦争が始まった。木浦は数カ月で占領者が南、北、南と入れかわり、金さんは再び拘束された。当時の韓国は独裁政権下。密航船で祖国を後にした。母の死の知らせが入っても足を運べなかった。 やがて、韓国では民主化が進んだ。軍事政権下ではタブー視されていた4・3事件も、金大中(キム・デジュン)大統領下の2000年には真相究明と犠牲者の名誉回復のための特別法ができ、03年には盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が島民に謝罪した。 今年は事件から60年。済州道庁などが4月3日に島で開く節目の慰霊式に在日コリアンの関係者も招かれた。金さんは最初はためらったが、最後の機会になるかも知れないと思い、初めて旅券をつくった。 済州島では、幼いころサザエをとった海をながめ、両親の墓参りをしたい。事件で死んだ仲間の生きた証しにと、好きなヒマワリの種をふるさとの山にまきたいと考えている。 PR情報この記事の関連情報社会
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