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くらし

“救急崩壊”都市部も 医師不足に加え、出動要請急増

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 兵庫県内の救急医療が危機に直面している。医師不足から病院が次々と救急から撤退する一方、残された医療機関に患者が押し寄せる。医師不足が顕著な地域だけでなく都市部でも、救急車は受け入れ先の病院を探し、遠く離れた病院に搬送するケースが目立つ。迅速な治療開始に支障を来す可能性もある。救急現場で何が起こっているのか、要因は何なのか、報告する。(鎌田倫子)

 救急医療を支える地域の公立病院。二〇〇四年に導入された新臨床研修医制度の影響で、勤務医が派遣元の大学病院に引き上げられ、救急医療の現場で深刻な医師不足が生じている。

 新制度の波をもろにかぶったのが但馬地域だ。県の調査では、九つの公立病院で医師が二十一人も減った。小児科や産科などが診療体制を縮小。公立日高病院は救急患者の受け入れが難しくなり、昨年一月に救急告示病院から外れた。

 県と地元自治体などは、地域で効率的な救急医療体制を築くため、医師の集約化と機能分担を計画。小規模病院の医師の一部を、豊岡病院と八鹿病院に集め、二つの病院が重症患者など急性期医療を担当。ほかの病院は慢性期の患者を担うという構想だ。

 美方広域消防本部(新温泉町、香美町)によると、二〇〇七年の救急千四百九十三件のうち、管外への搬送は約半数。〇七年四月に公立浜坂病院が小児科を休診したため、管内に小児救急に対応できる常勤医はゼロ。入院や手術が必要な子どもの患者は、主に鳥取県に搬送している。

 都市部でも課題はある。神戸市消防局によると、搬送先を探し医療機関に問い合わせた交渉回数が十回以上のケースは、年間数件程度から、〇七年に四十六件に跳ね上がった。

10年で1・5倍 〇六年の県内の救急出動件数は二十二万三千件に上り、この十年で約一・五倍に急増した。さらに、夜間や休日に病院に駆け込む患者も増えている。

 患者の増加について、指摘されているのは、安易な救急通報やコンビニ受診。軽症の患者が、本来受診すべき一次救急医療機関を飛び越えて、二次救急病院に押し寄せるという構図だ。「『子どもが転んだ』『頭痛がする』といった理由で深夜や休日に駆け込む人もいる」と関係者は話す。

 入院や手術が必要な患者に対応する病院でつくる神戸市第二次救急病院協議会が昨年十二月にした調査では、夜間・休日診療で入院した患者は一割だった。

 重篤患者に対応する三次救急病院にも影響する。神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センターは、市外からの搬送も含めた急患の増加などで三次患者に備えたベッド確保が課題になっている。

かかりつけ医を 厚生労働省は〇八年度から、各都道府県に救急患者の病院を探す「搬送コーディネーター」を置く新事業を始める。

 医師が搬送コーディネーターを務め、一人で県内全域を担当する構想だが、県医務課は「担当エリアが広すぎる。救急医さえ足りない現状では人材確保がまず困難」と導入に難色を示す。

 医師不足が深刻な丹波地域では昨年四月、子育て中の母親らが「県立柏原病院の小児科を守る会」を結成した。核家族化で若い親が相談相手がいないことが、コンビニ受診に拍車を掛けたとして、開業医のかかりつけ医を持つことを呼びかけている。

 医師が監修した重症度を測るチャートを市民に配布し、勤務医の負担軽減を訴えたところ、同病院では小児救急の軽症患者が減るなど効果が表れている。

(3/28 10:01)

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