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自白調書も厳選、提出しない選択も 最高検が方針転換

2008年03月26日15時00分

 あえて自白調書の提出にこだわらない選択もあり得る――。09年5月までに始まる裁判員制度に向け、最高検がこんな一節を含む指針をまとめた。法律の素人である裁判員のために証拠を絞り込む必要性を訴え、「証拠の王様」と称される自白調書も例外ではないとしている。さらに、提出されずに無罪判決などが出ても「検察官を責めるな」と検察の内部体質を戒めている。これまで多くの証拠を提出してきた検察にとっては方向転換と言えるが、現場からは疑問の声も漏れる。

 指針は、最高検が一昨年公表した捜査・公判に関する旧版を大幅に加筆・修正した新版。日常業務や勉強会の資料として検察官らに配布された。

 指針はまず、裁判員の能力や負担を踏まえて刑事訴訟規則に新設された「証拠厳選」の規定に絡み、「厳選しなければ裁判員を誤った判断に導くおそれが高い」とその必要性を訴えている。

 自白調書についても、「証拠としての揺るぎなさ」では証拠物や鑑定書、捜査報告書を下回るとした上で「信用性に疑問を抱かれたときのダメージは極めて大きい」と提出に伴うリスクを指摘。「まず自白を除いて、より客観性の高い証拠によって何が立証できるか」を検討し、自白が本人の意思によるものかという任意性をめぐって立証に時間がかかりそうな場合は「あえて提出にこだわらない選択もあり得る」としている。

 また、検察側がこれまで多くの証拠を提出してきた背景について、「無罪や量刑不当などの判決が出た場合に、高検や最高検から立証不十分と言われないように」といった自己防衛的な発想があった――と分析。「証拠を厳選して無罪や量刑不当の判決が言い渡されても、検察官を非難すべきではない」と、現場に非難が集中しがちな検察の内部体質を戒めている。

 一方、裁判員裁判が扱うのは、殺人や強盗致死など被害者感情が強い重大事件がほとんどのため、検事の中には「無罪判決が出れば、担当検事は内部から『なんで自白調書を出さなかったのか』と責められるだろう。指針はきれいごとに過ぎない」との声もある。

 〈証拠の厳選〉 裁判員制度に向けた刑事訴訟規則の改正で盛り込まれ、05年11月に施行された。「証拠調べの請求は、証明すべき事実の立証に必要な証拠を厳選して、これをしなければならない」と定めている。

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