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お医者さん来てね、給料もいいし、豪邸もあるよ
慢性的な医師不足が言われる中、各地の医療機関が激しい医師獲得合戦を繰り広げている。大都市から離れた地方では高額年俸を提示するところや、豪華な戸建て住宅を用意するところまで登場し、その必死さが医師不足問題の深刻さをクローズアップさせている。(神庭芳久)
「上限3500万円」の大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院は、年俸を前面に打ち出し、医師獲得に乗り出している。3月末で麻酔科の常勤医師が体力的な理由で退職するためだ。病院では欠員に備えて約半年前から医師を募集していたが、応募がなく、高額年俸を提示することになった。
公立病院にとって「3500万円」という年俸は、経営トップの病院事業管理者の2倍以上の額。病院では「何人かの問い合わせがあり交渉中」と話す。
和歌山県新宮市では来年度予算に、医師用住宅5戸の建設費など約3億5000万円を計上した。産科医不足から、市立医療センターで分娩予約の一時中止を検討する事態に追い込まれた経験を持つからだ。
新しい医師用住宅は、耐震機能を備えた5LDK。同センター庶務課は「家族がいる40代の中堅医師を想定している。定住してもらうためにもそれなりの住宅が必要」と説明する。
長野県は、県内に一定期間住むと契約した医師に研究費名目で上限300万円を支給する制度を始めている。即戦力確保のため、県庁に「医師確保対策室」も設けられた。対策室では「金銭で簡単に医者が来るとは限らないが、行政の支援範囲は限られる」と医師不足の実体を嘆く。
他にも、待遇を改善したりして医師を呼ぼうとする医療機関は各地にある。とりわけ大都市から離れた地域の病院で、医師不足は深刻だ。
地域医療に詳しい東北大医学系研究科の伊藤恒敏教授は「医師の絶対数が不足する中、獲得合戦は結果的に、医師の玉突き移動を招いているだけ」と指摘。「地方は病院の集約化で人材を厚くし医師への指導ができるといった環境を整備するなどの、医師を引きつける魅力ある病院作りが必要」と話している。