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オーマイニュースの1年 (北海道新聞への寄稿・その1) 

元木 昌彦(2008-03-24 10:05)
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韓国生まれの市民参加型ネット新聞

 「オーマイニュース」は韓国生まれの市民参加型ネット新聞で、2000年に「市民みんなが記者」を合い言葉に、呉連鎬(オヨンホ)氏によって創刊された。

 それまで言論の自由が制限されていた韓国では、“準備された市民”たちの熱い声援を受け、2年で登録市民記者は3万人を超え、第4のメディアとして認知されるまでに成長した。

 中でも、4年前の大統領選挙で、有力候補ではなかった盧武鉉(ノムヒョン)氏を、「ネチズン」といわれるネット市民たちが応援し当選させたが、その中心となったのが「オーマイニュース」だった。

 その後も順調に成長を続け、現在、登録市民記者は5万人にまでなっている。

2006年8月28日に日本版を創刊

 その「オーマイニュース」が、編集長にテレビキャスターの鳥越俊太郎氏を迎え、日本版を創刊したのは一昨年の8月28日だった。

 私は、講談社という出版社で1999年に「Web現代」というインターネット・マガジンを立ち上げたことがあり、「オーマイニュース」にも、以前から注目していた。

 創刊前、鳥越氏と呉代表に会い、このメディアの可能性と問題点について話し合ったことがある。私は、日韓の歴史的、感情的な問題を抜きにしても、「オーマイニュース」が日本で成功するのは難しいと、率直に申し上げた。なぜなら、この国には「言いっぱなし」という限定付きながら、言論の自由はある程度保証されている。また、世界に例を見ないほどのブログや匿名の掲示板文化があり、あえて「オーマイニュース」に参加する必要性を感じないはずだ。その他にもあるが、紙面の都合上、省略させていただく。

市民記者の数もサイトの閲覧数(PV)も伸び悩んだ

 しかし、「実名で発言する文化を、日本のネットに根付かせたい」とする鳥越氏のネームバリューもあって、創刊当初はメディアの注目度も高く、市民記者の数も順調に増えていった。私の心配は杞憂に終わるかもしれないと思えた。だが、鳥越氏の「2ちゃんねる」挑発発言などもあり、ネット内で「オーマイニュース」の編集方針や記事の質を巡る批判が相次ぎ、市民記者の数もサイトの閲覧数(PV)も伸び悩んだ。

  韓国に倣って、市民記者の記事にはニックネームでも感想を書き込める「コメント欄」が設けられたが、当初から、「偏っている」「韓国の手先」といった批判や中傷が相次いだため、本人確認ができない市民記者は、コメント欄に書き込みができないようにした。

 年内に5千人を目指した市民記者の登録数も、12月中旬で約2700人、このうち実際に記事を書いたことのある記者は約400人、1日に寄せられる記事数は30本程度にとどまっていた。

鳥越氏に代わり編集長へ

 鳥越氏から「体調がよくないので編集長を代わってくれないか」という電話があったのは、06年の末だった。年が明けてすぐに、呉代表とも話し合い、引き継いだのは2月始めからである。

 私のような新参者でも、数週間で、編集部が抱えている課題は見えてきた。

 市民記者登録数やPVの低迷はもちろんだが、一部の市民記者を除いた大部分の記事と、それをチェックする編集部員の編集力のレベルアップ。コメント欄の誹謗中傷に近い批判に、嫌気がさして記事を書かなくなる記者たちへの対応。市民“参加型”のはずなのに、一部の市民記者たちは、お客様気取りで、自分の原稿には手を入れるな、編集部の応対が悪い、プロの記者(編集部発のノンフィクション・ライターなどによる記事)たちを優遇しすぎるなどの要求を、担当者に突きつけてくるのだ。中でも最大の問題は、2年後に予定しているビジネスモデルをどう構築していくのかが、全く見えないことだった。

(北海道新聞への寄稿・その2へ続く)

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