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志布志事件「違法に接見交通権侵害」 国・県に賠償命令

2008年03月24日13時58分

 03年鹿児島県議選をめぐる選挙違反事件=被告12人全員の無罪が確定=の際に、容疑者や被告との接見内容を調書にされ、接見交通の秘密を違憲・違法に侵害されたとして、鹿児島県などの弁護士11人が国と県に総額1億2100万円の損害賠償を求めた国家賠償請求訴訟の判決が24日、鹿児島地裁であった。高野裕裁判長は「違法に弁護人固有の接見交通権を侵害した」として原告の請求を一部認め、国と県に計550万円の支払いを命じた。

 接見交通権をめぐる訴訟は、日本弁護士連合会が把握しているだけで本件を含めて62件ある。大半は接見禁止・妨害を巡るもので、接見内容の聴取や調書化の是非が争われた訴訟は前例がないという。全国から611人の弁護士が原告代理人に名を連ねた。

 問題の接見は、03年の県議選曽於郡区で初当選した中山信一県議と妻が住民11人と計191万円を授受したとして公職選挙法違反の罪に問われた「志布志事件」の際、容疑者や被告とその弁護人の間で行われた。

 訴状などによると、県警と鹿児島地検の捜査担当者は、容疑者や被告計7人から弁護士との接見内容を聞き取り、「否認をそそのかされた」「親族からの手紙をプラスチックの壁ごしに見せられた」といった趣旨の供述調書計76通を作成したとされる。

 原告の弁護士らは、憲法や刑事訴訟法が保障する接見交通権は「たとえ捜査上必要があるとしても制約されない不可侵の権利」と指摘。接見内容を調書に取るのは警察官が接見に立ち会うのと変わらず、「秘密交通権」の侵害に当たると主張していた。

 これに対して国・県側は、接見内容を聞いてはならないのは接見中に限られる、と主張。接見内容を調書化したのは(1)捜査側から質問していないのに容疑者・被告の側から自発的に供述したか、(2)弁護士が接見の際に否認を働きかける捜査妨害行為があり、供述の任意性・信用性を担保する必要があったケースで、違法性はないと主張していた。

 接見内容の調書化は、志布志事件の公判で検察官が国選弁護人2人の解任を申し立て、「接見の際、親族からの手紙をガラス越しに被告に見せた。接見禁止の趣旨を逸脱する」と、元被告と弁護人しか知り得ない事実を証拠として示したことで発覚した。

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