新銀行東京 設立時から懸念の声、石原知事聞く耳持たず2008年03月21日06時15分 都が1000億円を出資し、経営難に陥っている新銀行東京で、石原慎太郎知事が設立構想時に金融の専門家らから「銀行で中小企業支援に乗り出すのは危険」と指摘されながら応じなかったことが分かった。設立前には金融界からも懸念の声が上がっていた。専門家らは「知事は聞く耳を持たなかった」と話している。 「中小企業融資とベンチャー支援を言い出した時、最もリスクが高い二つだと反対したが聞き入れられなかった」。経営コンサルタントの大前研一氏は振り返る。 大前氏は01年8月、石原知事と会食し、「都営銀行」の設立を提案した。手数料収入を軸にしたインターネットバンクの構想で、その直後、都に調査チームができた。 02年半ば、大前氏が知事と会談した際、知事は中小企業とベンチャー支援を主張した。大前氏は「中小企業融資は大銀行でも不得手な領域で、素人の都が手を出せるものではない」と強く反対したが、知事は「国や大銀行がやらないからこそ、やらねばならない」と譲らなかったという。 大前氏は「中小企業融資を中心に据えた知事の責任は疑いようがない」と指摘する。 新銀行設立前には金融界からも否定的な意見が相次いでいた。 都の銀行構想発表を受けて、全国銀行協会は03年、「損失が発生した場合は国民の負担に跳ね返ってくる懸念もある」「健全性の確保と民間で取れないリスクを取ることが両立するか」との会長コメントを発表した。知事は「既存銀行が本来の役割を果たしていないのに都の取り組みを否定するもの」と反論したが、現在の全銀協会長の奥正之・三井住友銀行頭取は18日の会見で「懸念が現実化している。中小企業には保証制度がある中、個人的には非常に疑問を感じていた」と述べた。 大手信金の城南信金(東京都品川区)の真壁実名誉会長は04年、「新銀行は不良債権の山を抱え込む可能性が極めて高い」と指摘した。中小企業融資のノウハウを持つ信金が融資しない企業への貸し付けは焦げ付く可能性が高いとみていた。 城南信金が融資を断った企業に新銀行が8%ほどの高利で貸し付けた例もあるという。真壁氏は知事の中小企業融資への認識に疑問を示し、「自分の金であっても出資できるかという視点で考えてほしい」と話す。 PR情報この記事の関連情報社会
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