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苦悩深い救急現場 県会議で課題ぶつけ合う

2008年03月20日

 医師や消防、行政関係者が集い、救急医療の課題について意見を述べ合う「県救急医療体制推進会議」(委員12人、専門委員13人)が18日夜、高松市内で開かれた。重症の患者をどこで受け入れるか。軽症なのに救急車を呼ぶような「コンビニ受診」をどう減らすか。県内の救急体制をどう築いていくか。真剣に議論が交わされた。(東孝司)
 会議では、総務省消防庁が今月に取りまとめた全国の救急搬送の受け入れ状況調査の結果が議題になった。この調査で県内では、重症患者の搬送で11回も受け入れや治療を断られたケースが判明。このケースに携わった県立中央病院の医師が偶然にも会議の委員で、当日の様子を語った。
 医師によると、県西部の患者の男性は早朝、腕を機械に巻き込まれて切断した。患者は接合を希望したが、処置できる病院を救急隊がなかなか見つけることができない。9カ所目に県立中央病院に打診。休日の日直だった医師は「ずっと待機している。とりあえず受けてほしい」という消防の打診に「再接着は技術的に無理だが、受けるだけ受けた」。
 切断面の応急処置をしながら、知人を頼って全国の大学病院に受け入れを要請。だが、大阪大、広島大と次々と断られ、最後となる12カ所目の神戸赤十字病院の先輩医師が「やるだけやってみよう」と受け入れてくれ、数時間後に県のヘリコプターで運んだものの、結局、接合は無理だったという。
 医師の報告に、出席者からは「12回という数字だけが表に出るのはどうか。努力を尽くした結果ではないか」と声が上がった。
 話は重症患者の搬送にとどまらず、奈良県で問題になった妊婦搬送についても「下痢など明らかな内科疾患なのに消防は産科救急に運んでくる。医師の疲れが増す」と問題提起する医師や、「精神科の患者を輪番の病院に転院搬送しようとして拒否された」と指摘する医師もいた。安易なコンビニ受診に対応しきれないとの意見も上がった。
 救急現場の苦悩を踏まえ、委員から「どの病院の、どの医師なら、どの症状に対処できるか。マニュアルの整備が必要では」と提案があり、さっそく県側が検討することになった。
 総務省消防庁の調査によると、県内は「受け入れ照会4回以上」が全体の0・5%と、全国平均の3・9%を下回るなど救急体制は比較的高水準にあるとされる。
 その上で県は、医療機関が受け入れ態勢を入力する「救急医療情報システム」の1日2回の情報更新の徹底、「コンビニ受診」を減らすことなどを目的にした広報活動に取り組み、救急体制の充実を目指していくとしている。

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