チベット民族にとり独立は悲願である

中国の抱える3つの矛盾

岡井 健(2008-03-19 14:05)
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  中国は大きな矛盾を3点抱えている。

 1つは、共産党による一党独裁の堅持である。それによる民主化、あるいは国民の声を聞く体制・システムを持たないことである。

 2つ目が、社会主義体制であると主張しながら、経済効率一辺倒の資本主義体制への無貞節な移行である。

 最後の1つが民族問題である。

 現在の中華人民共和国は、本来の漢族を中心とする人たちの支配する中原(中央部)だけでなく、チベット地区、新疆ウイグル地区やモンゴル地区、それにほとんど漢族に同化してしまった満州地区を周辺に取り込んでしまっている。

 この中でも、ウイグル地域の民族とチベット民族は、明らかに中華人民共和国とは歴史も民族も異なる。長年、独立運動がくすぶっているところである。とりわけチベット地域は、毛沢東がダライ・ラマの印章を偽造してまで強引に併合した経緯がある。

 後年、中国自身が、印章の偽造は、解放のため必要だったと居直りの発言までしている。チベット自治区とは名ばかりで、最近は、ラサまで鉄道を引いて、中央政府の力を誇示しようとしている。ラサ市内に漢族の名称を付け始めている。

 ソビエト時代の中央アジアや、新疆ウイグル自治区を見たことがあるが、街の中央はロシア人や漢族が占拠し、周辺に少数民族がみすぼらしい掘立小屋を並べていた。こうした辺境の地域を併合した大国の通例である。

 中央の権力と財力で、経済を握り支配する。中央に従順な傀儡で権力を作り上げて、支配する。ウイグル地域などは資源まで収奪する。

 10%前後の経済成長を長年持続することや、上海や北京などのとてつもない富裕層の出現などは、上記の矛盾する3点を 貫き通すことで成し遂げられた、いわば正の部分である。今の中国には、経済発展にマイナスになる負の部分となる民族問題を解決する視点はない。

チベット民族にとって、独立は悲願(ロイター)
 今回起きたチベット地区の反乱も、アメリカから国家元首待遇の勲章を授与されたノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマを非難し、武力的な鎮圧を繰り返すことしかできない。暴力的支配が、社会主義の疑念にそぐわないのは明らかである。

 チベット民族にとって、独立は悲願である。太平洋戦争時、チベットは日本に宣戦布告をした。少なくとも、チベットは60年前まで、あるいは1951年までは、国家としての体裁は保っていた。だから、毛沢東が「併合」したのである。

 中国やロシアやスペインが、コソボの独立を認めないのは、チベットやチェチェンやバスクを国内に抱えるからであって、真に、彼ら民族のことを考えているのではない。

 今回のチベットの、穏健な僧侶たちの反乱が、組織だった運動になる見込みは薄いものの、武力制圧はさらなる矛盾を抱えることになる。

 世界に、独立したい民族は数多くある。彼らに独立を認めさせ、代わりの国境の塀を極端に低くすることで、21世紀の紛争の多くは解決できる。

 それを認めようとしないのは、大国が、さらなる大国になるために、利権を求めたがるからである。


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