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新銀行東京:光明見えぬ、夜中過ぎ特別委延々

 深刻な経営不振に陥っている新銀行東京(東京都千代田区)で、税金400億円の追加出資の是非を審議する都議会の予算特別委員会は13日、開会が予定より約7時間遅れる徹夜議会となった。連日の議会で追及を受ける石原慎太郎知事は釈明や開き直りをする姿が目立つが、身近に接してきた関係者や識者にそうした姿がどう映ったか。【佐藤賢二郎、木村健二、五味香織】

 予算特別委員会を控えた同日午前、民主、共産などは新銀行東京の経営悪化の原因をまとめた調査報告書の全文公開や、経営陣の参考人招致などを要求。この扱いを巡って午後1時からの予定だった委員会は開会が大幅に遅れ、始まったのは午後8時近くだった。

 同委員会で、都側は今後の訴訟への影響などを理由に報告書の公開拒否の理由を説明。共産は参考人招致を求める動議を提出したが否決された。さらに、全文公開を求める動議の採決を巡って委員らが委員長席に詰め寄る場面もあった。

 「これまでの質疑を通じて都民の疑問に答えられるか」と問われた石原知事は「目前に迫っている墜落を考えれば、これ(追加出資)しかない。成否は必ず都民に理解していただけると思う」と、かすれがちな声で訴えた。

 11日から始まった予算特別委員会。新銀行の開業前、東京都は業務運営の基本指針「マスタープラン」を作成。その中で「開業3年後は54億円の黒字」とバラ色の未来を予想したことが追及されたが、石原知事は「マスタープランを運転するのは運転手(経営者)。その才覚で自動車をあちこちにぶつけて、こういう体たらく、傷だらけになっちゃった」と、旧経営陣の責任へと転嫁した。

 民主の委員が「全庁的な議論もないままトップダウンで銀行設立を決めた」と追及した時には「あなたの政党の大将の小沢(一郎・民主党代表)さん。相談もせずに大連立を持ち出されたり、取り消されたり。それがトップダウン」と皮肉を込めて切り返した。

 ◆財政再建評価すべきだ/世間失笑、分からないとは/有権者裏切り、責任認めよ

 ◇07年4月の知事選で石原知事の選対本部長を務めた佐々淳行・元内閣安全保障室長の話

 新銀行は石原知事が初めからリスクを覚悟で中小企業を救済するための徳政令として義侠心(ぎきょうしん)から作った。(多額の負債といって)今になって重大事にとらえるのは不公平。赤字だった都財政を再建させた知事の功績こそ評価すべきだ。業績悪化を招いた旧経営陣は厳罰に処す必要がある。

 ◇石原知事の評伝「てっぺん野郎」を著した作家、佐野眞一さんの話

 世間の大半が知事に責任があると思っている中で反論するのは失笑を買うだけなのに分かっていない。耳の痛いことを言う側近もいないのだろう。責任回避が習い性になっている。石原氏は、常に脚光を浴びることでアイデンティティーを保ってきた。だが、彼にも確実に老いが忍び寄っている。引き際を間違えたのではないか。

 ◇山口義行・立教大経済学部教授(金融論)の話

 まさに「ああ言えば、こう言う」。最近はワンマンを売りにした経営者や組織のトップが部下のせいにすることが多く、教育に良くない。そもそも都が銀行を作る政策に無理があった。必要性があれば、業績は好転したはずだ。責任転嫁は石原知事のリーダーシップを信じていた有権者への裏切りだ。「私に全責任があります」と言うべきだ。

毎日新聞 2008年3月14日 東京朝刊

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