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  ▼ 記者の視点
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3学会合併から垣間見える「総合医」の行方
合併に向けた課題も山積
2008.3.14

 総合的な診療能力を備えるいわゆる「総合医」を養成するための後期研修プログラムを検討している日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会のプライマリ・ケア関連3学会が、2010年4月の合併を目指して協議している。

 総合的な診療能力を備える医師が標榜できる「総合科」創設議論の最中、厚生労働省や日本医師会からも、3学会合併に向けて期待感が高まっている。

 ただ3学会には共通理念として、「特定の臓器や疾患などに分化した専門医を目指すのではなく、患者ニーズに応え、全人的な医療や精神的ケアまで提供する」との考え方がある一方で、学会ごとに会員の構成や果たすべき使命が異なるなど、合併に向けた課題は山積している。

◎ 3学会にも温度差が

 名古屋市で9日に開かれた日本総合診療医学会のパネルディスカッション。議題の1つとして、3学会の合併が話題にあがった。

 出席した家庭医療学会と総合診療医学会の幹部は、3学会の合併に向けて、それぞれ前向きな姿勢を示したが、PC学会の前沢政次会長は、3学会の合同に向けたコメントとして、「可能な範囲で協働し、認知度を高め発言力を強化すべき」との表現にとどめており、3学会でも多少の温度差があることをうかがわせた。

 PC学会は1978年に設立され、3学会のうち最も歴史がある老舗学会。会員構成をみると、医師だけでなく、歯科医師、薬剤師、看護師などで組織され、これら医療従事者が地域の保健・医療・福祉を総合的に展開することを使命としている。

 一方、家庭医療学会は、「人間と家庭と地域とを統一体としてとらえる医療」に重点を置くほか、総合診療医学会は、大学病院などの大病院の中で、プライマリ・ケアが必要な患者のニーズに応えたいとする「医師」が集まっている。3学会は、こうした異なる理念のすりあわせのほか、会員構成のバラツキをどう吸収するかという課題を抱えている。特にPC学会では、医師以外の会員の取り扱いに配慮する必要があるため、慎重に議論を進めたいと考えている。

 ただ、もともとは家庭医療学会と総合診療医学会は、PC学会の会員が立ち上げに関与した経緯があるため、重複して所属する会員も多い。さらに、これまで総合的な診療能力を備え全人的な診療ができる医師を養成するという大目標に向けて、3年に1度、合同でプライマリケア関連の学会を開催するなど、共同歩調を取っている。
 そうした中で、厚労省も「医道審議会医道分科会診療科名標榜部会」を立ち上げ、総合的な診療能力を備える医師が標榜できる「総合科」の新設を提案し、国が「総合医」を認定する仕組みを視野に入れていることを明らかにした。

◎ 日医は「認定かかりつけ医」を視野

 これに対し、日医は、生涯教育制度の中で、一定の研修を受けた医師を「日医認定かかりつけ医」とすることを視野に活動している。

 学術推進会議、生涯教育推進委員会と、上記3学会で、研修プログラムなどを策定。日医と関連3学会による認定かかりつけ医を、国による認定の代わりにすることを目指しているため、3学会への注目度は高まっている。

 ただ3学会は、日本医学会にも加盟しておらず、社会的な立場が弱いという懸念も指摘されている。前述のパネルディスカッションで、日医の飯沼常任理事も、「小異を捨て大同に立って円滑に進むことを願う」と3学会の合併に向けて高い期待感を示している。

 日医と3学会による認定かかりつけ医をもって、国の総合医認定の代替とするためには、3学会の合併は避けて通れない道ではないだろうか。(半田 良太)



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