「信じぬ者」と瀬名さんとパライブの頃

瀬名秀明さんのブログに取り上げていただいた。ありがとうございます(香山さんが献本されたのだと思う)。
http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2008/03/post_68fe.htmlLink
 
実は瀬名さんとは先週『SF大賞』のパーティでお目にかかったばかりなのだけど、僕もかなり疲れていたし(薬を飲んでいて、パーティなのにビールも飲めなかった)、あまりつっこんだ話はしなかった。
いずれにしても、あの時点でこの対談は読んでおられなかったはず。
 
ブログで書いておられる批判についてはよくわかるので、特に反論はない。そういう感想は充分ありうると思う。
なにかの周辺をぐるぐる回っているだけに見えてもしょうがない、というより、ぐるぐる回っているところを読んでいただく本である。問題を解決する本とはとても言えず、スピリチュアルやニセ科学やその他さまざまな局面に共通の問題が見え隠れすることを確認していくという、そういう内容。読後は「もやもや」すると思う。ニセ科学批判であれスピリチュアル批判であれ、そうそう能天気にはやれないなあという話、かな。
考えれば考えるほど、悩みばかりが増えて、クリアなことはあまり見つからない。あるいは、クリアなことはたくさんあるのだけど、それは悩みを解決してくれないらしいというべきかも。
 
ただ、「科学とは何か」については意見の一致しない部分があり、もしかすると一度きちんと議論したほうがいいのかなあという気もする。僕は瀬名さんに「科学を伝える人」としての役割を期待しているので。
ちなみに、僕自身は、自分が科学者としてきわめて保守的であると思う。
 
それはさておき、ブログに『パラサイト・イブ』当時の話が書かれていた。まだブログなんてものができるずっと以前、手書きのスクリプトで掲示板を運用していた頃の話だ。今で言う「炎上」事件か。懐かしいといえば懐かしいかな。一部では僕が『パラサイト・イブ』否定派の急先鋒だったかのように思われている・・のかな。
今更かもしれないけど、少し書いてみる。
 
議論になった点は単純なことで、『パラサイト・イブ』はミトコンドリアを擬人化して描いたかどうかである。多くの読者が「擬人化している」と読んだ。僕もそう読んだ。擬人化しちゃだめじゃん、という話が僕の掲示板で話題になった。僕も擬人化しちゃだめじゃん、と書いた。
ところが、瀬名さんによれば(なにしろだいぶ以前のことだけに、ここの記憶があいまいで、瀬名さんが公開の掲示板に書かれたのか、私信でいただいたのかおぼえていない。掲示板だったことにしてここに書きます。私信だったらごめんなさい)、「擬人化しないように注意を払って書いた」のだという。だから、僕らの批判は的はずれである、と。文章をよく読めば、擬人化していないことがわかるはずだというわけ。
 
この話で、いくらか腑に落ちた。「擬人化してないよ」と言われて、読み返してみると、たしかに叙述としては擬人化を注意深く避けていることが確認できる。なるほど、それが注意を払った点である。
勝手な言い方ではあるが、ここで瀬名さんが追求したものは、実はクリスティ的なフェアネスだったわけだ。あるいは、その意味でのフェアネスを追求した格好の例が『獄門島』のあの有名なセリフであるといえば、通じるだろうか。『獄門島』を最後まで読んで、「あのセリフはアンフェアじゃん」と思い、読み返した人は多いのではないだろうか。そして、「やられた」と感嘆したはずだ。あれがミステリにおけるフェアな叙述である。叙述トリックの一種といってもいい。
いったんは読み逃すが読み返してみると納得できる、というのが、この手の叙述トリックなので、読み返すのは前提となっている。
(追記: これはクリスティよりクイーンだろうというご指摘をいただきました。たしかにそこは少しだけ考えたところなのですが)
 
しかし、ではなぜ読み返すのかと言えば、実は作品が「本格ミステリ」だからである。僕たちは『パラサイト・イブ』を叙述トリックものの本格ミステリとしては読まなかったから(著者もそんな期待はしていないはず)、「擬人化してるじゃん」と思って最後まで読んだら、それっきりである。あとになって「擬人化してないよ」と言われても、「そんなのわかるわけないじゃん」という感想しか出てこない。一読目ではっきりわかるように、もっとあからさまに書け、と文句を言うことになる。
最初に読者に「擬人化している」と思われたら、それでおしまいなのだ。そして、「擬人化している」と思うか思わないかは読者の勝手である。それが困るなら、作者がかなり「あからさまに」書かなくてはならない。
そこが、本格ミステリとの違いである。つまり、ここではジャンルが大きくものをいっていたわけだ。
 
これまた勝手な思いこみかもしれないが、他の作品でも瀬名さんはこのクリスティ的なフェアネスを重視している気がする。しかし、この手のフェアネスは、本格ミステリ以外ではあまり有効ではない。唯一、ハードSFの一部に有効だと思う。本格ミステリとハードSFの類似性については、いずれどこかでまとめて書いてみたい。いや、ハードSFに有効ってことは、ファンタジーにも有効なのかな。ハードSFとファンタジーの類似性については、たぶん僕よりも横道仁志君(日本SF評論賞受賞者)が議論すべきだろう。閑話休題。
 
だからこそ『デカルトの密室』は傑作なのだ。あれは問題設定そのものがクイーンの有名な初期中編へのオマージュになっているくらいで、そもそもが本格ミステリである。SFと本格ミステリの融合として非常によくできている上に、(僕の理解では)「フレーム問題」をロボットの一人称で書こうとした意欲作でもある(ただし、叙述にも仕掛けがあるため、真実はわからない。その意味で、一種のメタミステリにもなっている)。
僕の勝手な考えでは、たぶん、これが瀬名さんの資質に最も合ったジャンルなのだ。
人称の仕掛けだけなら、『パラサイト・イブ』もそうだったという解釈もできるのだけど、残念ながらあちらは全体が本格ミステリの体裁になっておらず、ホラーになっていたため、人称の仕掛けが読者に通じなかったわけだ。
 
昔の話を思い出したので、書いてみた。重ね重ね勝手な言い草かもしれん。
擬人化論争に続いて「あれはSFじゃない」論争があり、僕は「SFはジャンル小説である」という主張をしているのだけど、それはまたそのうち書くかもしれない。この「ジャンル性」も瀬名さんと意見が一致しない部分である。
 
[追記]
もっと正直に書くと、僕が瀬名さんの作品で一番好きなのは『八月の博物館』である。もっとも悩ましいのは『Brain Valley』で、これについては『週刊読書人』にレビューしたことがあるが、今なら「最後の1/4以外は大傑作」と言うと思う。『Brain Valley』は今の瀬名さんなら書かない作品かな、という気がする。

[もうひとつ追記]
瀬名さんがどのくらいクイーン好きって、『第九の日』という作品があるくらい。『第八の日』なんて、クイーンの長編の中でもかなりマイナーな部類でしょう。しかし、この『第八の日』はとんでもない問題作で、初めてこれを読んだとき、なんじゃこりゃと仰天した記憶があります。クイーン入門としては絶対にお薦めしませんが、国名シリーズもライツヴィルものも読んだというかたは、未読なら是非。

[さらに追記]
『パラサイト・イブ』はずっと入手困難だと思っていたのですが、今は新潮文庫で手にはいるんですね。僕は最初の版しか読んでいないのですけど、どこかの段階で改訂したという話を聞いたような記憶があります。上の話はあくまでも最初の版が出た頃の昔話です。

― posted by きくち at 12:02 am commentComment [30] pingTrackBack [1]

この記事に対するコメント[30件]

1. ながぴい — March 16, 2008 @12:07:14

>『パラサイト・イブ』はミトコンドリアを擬人化して描いたかどうか

へえ、そんなことが話題になっていたのですか。
たしかにミトコンドリアがしゃべったり考えたりするのはおかしいですが、
この本読んだ当時はそれほど違和感ありませんでした。
「ブラッド・ミュージック」の例もあったし…

最近SF読んでないなぁ

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @12:20:23

それも「ジャンル性」に関わると思っていますが、それはさておき。
昔の話なんで、今詳細に議論してもしかたないですけど
、読者としては
(1)擬人化されているがそれはなんら問題ではない
(2)擬人化されているところが問題である
(3)擬人化されているとは思わない
の三通りがあり得たはずです。このうち、(3)が僕の想定外だった、ということかな。

3. 内海 — March 16, 2008 @12:18:15

私も「パラサイト・イブ」を読んだ時はミトコンドリアを擬人化した表現に違和感を感じたので、瀬名さんよりもきくちさんの意見の方に近いですね。
確か、文芸評論家の斎藤美奈子も当時ミトコンドリア擬人化について、かなり厳しい評論をしていたので、きくちさんが批判の急先鋒だったとは思えませんがf^_^;
それにしても、この話って「信じぬ者は救われる」の書評とあまり関係無い気がするのは私だけでしょうか?

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @14:02:18

僕も自分が急先鋒だなどと自分で思っていたわけではないので。
たしか、特にそれについて言及するメディアがあったわけでもなくて、掲示板に書いただけじゃないかな。
『SFマガジン』の年間ベストにコメントしたかもしれないですが、ほとんどの人の目にはとまらなかったでしょう。『ヒュウガ・ウィルス』を褒めて、『パラサイト・イブ』を批判したのだったかもしれません。
 
もちろん、この話は書評とは関係ないです。

Up5. トンデモブラウ — March 16, 2008 @15:45:33

瀬名秀明さんのブログでの「実験至上主義」にはちょっと違和感があります。
科学者以外の一般人は、そんなアホなのか?
そんな無駄な労力を使って生きていないと、欺瞞に欺かれるってか・・・嘘でしょう。
手抜きのできない科学者の将来性を私は信じませんが。
少なくとも私のような一介の技術者は、一手間いや一分でも工程が短縮する技術を開発したい(楽がしたいんじゃあ〜)と考えて仕事してますけど。
世間的には、異端なのかなぁ。

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @16:02:31

そこは僕も瀬名さんに同意できない部分です。
どこがどう同意できないか、よく考えますが、一度きちんと議論したほうがいいのかなと思います。
 
「水伝」の文脈で出てくると、話はさらに混迷しますね。
「水伝」と切り離さないと、議論にならないかもしれない。

7. かも ひろやす — March 16, 2008 @16:27:46

瀬名さんの「実験至上主義」は、「実験」を成り立たせる条件の微妙さを無視した暴論ですね。事前に(事後にも)そこを吟味して初めて「実験」が成立するのです。「とにかく実験してみろ」は、そもそも、実行不可能です。水伝はそこを巧妙についた構造になっているのですが、瀬名さんにはそれが見えていないようで。

科学哲学的には、「観測の理論負荷性を甘く見ている」の一言でおしまいですね。(科学哲学が役立つことを初めて体験しました。)

8. ken2 — March 16, 2008 @17:11:54

「何でもかんでも実験」というのは上で書かれてる「フレーム問題」的なところがありますね。
どんな実験なら意味があるか、という範囲は(その境界領域が微妙であることはともかく)結構明らかな(部分はある)のに、さて言葉で説明しようとするとなかなかに難問なのかも。

目の前の爆弾処理をするときに、月の裏側の状況は考える必要はないってことですよね(周囲何メートルまでの安全性を確認すべきかは微妙な問題ですが)。
私は爆弾処理の教育なんて受けた事ないですが、素人でもこんな「あたりまえ」なら言える。

水に「ありがとう」はこの月の裏(よりはるか彼方向こう)の事だって素人でも分かるような事の気がします。

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @20:48:40

そうですね。
あるいはジャンル論にもつながるのだけど、枠を取っ払ってしまうとありとあらゆることを実験しなくてはならないという話になります。フレーム問題だとは認識していませんでしたが、似てますね

10. 風便り@てつこ — March 16, 2008 @20:35:13

瀬名さんの『デカルトの密室』は拝読いたしました。『パラサイト・イブ』は手元にありますが、まだ読んでおりません。

ただ、一般的な読者として、何度も読み返せる小説なのかどうかというのと、「ミトコンドリアを擬人化すべきではない」とか「SFかどうか」というのとは別問題なんだという気がします。

瀬名さんが、読者を選択しているのであれば、それはそれでしかたないのかなとも思いますが。作品が、自分の手を離れ、別な受け止め方をされるのは納得できないというのであれば、という意味で。

(きくちさんと初めて出会った頃、きくちさんがSFファンではなく、コアなミステリーファンであったことを思い出しました(^^)

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @21:08:56

あ、「読み返す」というのは、ミステリの叙述トリックをページを戻って確かめるという意味ね。
面白かったからまた最初から読み直す、というのは別の話。
 
そうそう、僕はSFよりミステリーでしたからねえ。特にクイーンと筑道夫が好きで。だから、フェアネスとジャンルの問題にはうるさい。
僕のミステリ観、というよりもっと広く「小説観」みたいなもののかなりの部分は、筑さんの『黄色い部屋はいかに改装されたか』に影響されています。上で『獄門島』が出てくるのもその影響ね。
ていうか、フェアネスっていう言葉も『黄色い部屋』でおぼえたんだと思う。

12. Jem — March 16, 2008 @21:21:36

あら、クイーンのファンだったとは初耳。

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @21:31:19

クイーンはかなりマイナーな作品も読んでますよ。だいたいは忘れたけど。『三角形の第四辺』とか『心地よく秘密めいた場所』なんて、タイトル以外は何もおぼえてない。『第八の日』はあまりにびっくりしたのでおぼえているけど。
後期なんてどうせ代作ばっかりなんだから、読まなくてもいいという話もありますがね。後期を代表する問題作『盤面の敵』はシオドア・スタージョンですよね。

Up14. a-gemini Website — March 16, 2008 @21:51:25

『第八の日』は、SF作家のエイブラム・デイヴィッドスンの代作ですね(『パラサイト・イブ』とは無関係な話ですが)。

Owner Comment きくち  March 16, 2008 @21:59:28

ああ、そうでしたっけか。
なるほどね。それは納得しやすいかも。

16. phaontts — March 17, 2008 @00:36:43

瀬名さんがコメントを受け付けていらっしゃるようです。

>このエントリーに限り、コメント欄を開けてみることにします。
http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2008/03/post_68fe.htmlLink

Owner Comment きくち  March 17, 2008 @01:24:02

あ、そうですね。
「実験至上主義」について議論するのは辛いかもねえ。
せめて、ネタが「水伝」でなきゃ、それほど辛くないんだけど。

「長い議論がある」は虚仮威しでもはったりでもないんで・・・

18. 技術開発者 — March 17, 2008 @09:40:03

こんにちは、トンデモブラウさん。

>少なくとも私のような一介の技術者は、一手間いや一分でも工程が短縮する技術を開発したい(楽がしたいんじゃあ〜)と考えて仕事してますけど。
>世間的には、異端なのかなぁ。

 「必要は発明の母」という事とともに「無精は発明の父」なんて冗談があるんですよ。実際の所、「無精したい」という意識が「必要」を刺激することで、必要が発明を孕むという意味で上手くできた例えだと思うんですけどね(笑)。
 
 私は「人間とコンピュータの将棋」なんて例を出して、「場を読むスピードではかなわない人間が、まだコンピュータに勝つのは『この手は味が悪い』とその先を読まずに、『味の良い手』の読みに集中する『枝切り能力』が優れているからですよ」なんて話をしたりします。

 なんていうか、将棋でも「定石」と言われる「枝切りを楽にするための経験則」があるみたいに、自然科学の探究にも「定石」があるのだろうと思います。昔、「定石とマニアルの違い」なんかを議論した事がありまして、RPGのマニアルはそのままでゲームクリアにつながるけど、定石は定石を覚えるだけじゃあだめで、定石を覚えてその後の展開まで使いこなせないと成らないんですけどね。

19. キタヤマ — March 17, 2008 @12:36:40

違和感を覚えたので、一言。
瀬名さんがご自身のブログで「『パラサイト・イブ』当時の話」に触れられたのは、
>だから私は、菊池さんがニセ科学批判における笑いの効用を説いて
>も、容易に信用することはできません。ニセ科学には笑いを浴びせよ>う、それが最大の批判効果をもたらす、という主張は、ときに怖ろし>い凶器となることを知っているからです。
という文脈に於いてです。

それに対して、このスレッドのはじめで、きくちさんは、
>それはさておき、ブログに『パラサイト・イブ』当時の話が書かれて>いた。(略)
>今更かもしれないけど、少し書いてみる
>議論になった点は単純なことで、『パラサイト・イブ』はミトコンド>リアを擬人化して描いたかどうかである。
という前置きで、擬人化について長々と書かれていて、
3.の内海さんの
>それにしても、この話って「信じぬ者は救われる」の書評とあまり関>係無い気がするのは私だけでしょうか?
のご指摘に対してきくちさんは、
>もちろん、この話は書評とは関係ないです。
と答えられています。

瀬名さんと議論がかみ合っていませんね。

Owner Comment きくち  March 17, 2008 @14:48:40

瀬名さんがどう思っておられようと、「パライプ」は関係ないでしょう。それから、笑いの話はこの対談本にほとんど出てきてないと思うんだけど。

Up21. 芹沢 — March 17, 2008 @13:56:43

噛み合う噛み合わない以前に、議論しているわけではないってだけじゃありませんかね。
そもそも瀬名氏によるパラサイト・イブの話自体、書評との絡みは薄いでしょう。これはむしろ著者批判の一貫であって、直接当該書の内容に関係ない。
で、それを受けて「書評とは関係ない」ことを認識の上で菊池氏の「当時の話」があるわけで。

勘違いされ易いことでもあるんですが、ここってあくまで菊池氏のWeblogであって公開議論用掲示板でも何でもないんですよね。だから、議論として噛み合わない「関連エピソード」が語られたって何の不思議もないわけで。

22. たかぎF — March 17, 2008 @14:25:11

>>> キタヤマさん:
> 瀬名さんがご自身のブログで「『パラサイト・イブ』当時の話」に触れられたのは、
> >だから私は、菊池さんがニセ科学批判における笑いの効用
> >を説いても、容易に信用することはできません。

> という文脈に於いてです。

私は逆に,その瀬名さんの文章を読んだときに違和感を感じました.
そもそも「信じぬ…」本の中で,「ニセ科学批判における笑いの効用」が説かれているわけではないし,私が知る限りでは,きくちさんは(確かにと学会員だけれど)ニセ科学批判を行う際に,と学会的なアプローチはとっていないからです.
なので,私にはその部分はむしろ,「『パラサイト・イブ』当時の話」があったので「"笑いを浴びせよう"というのは時に凶器になる」などという(書評と関係ない)話がでてきたように読めます.

23. 大森望 Website — March 17, 2008 @14:43:32

えーと、瀬名さんの考えかたとしては、『「擬人化してないよ」と言われて、読み返してみると、たしかに叙述としては擬人化を注意深く避けていることが確認できる』のなら、「すみません、ちゃんと読まずに批判してました。『擬人化しちゃだめじゃん』という批判は撤回します」と謝罪するのが筋でしょう、ってことじゃないでしょうか。
論争についてはともかく、「SFの人は謝らない」という主張を瀬名さんが広く訴えつづけるような事態は避けられたほうがよいと思いますが。

Owner Comment きくち  March 17, 2008 @15:35:45

あれを「擬人化」と読むのは普通ですよ。当時の書評にもいくつか出ていたはずです。それをあの作品の瑕疵と考えるか考えないかは読者の勝手ですが、瑕疵と考えた人もいたということですよね。瑕疵とは思わなかった人たちもたくさんいたわけでしょう。
擬人化したつもりがないのにそう読まれたのだとすると、問題点は僕が上に書いた通りです。僕の解釈だけど。
 
ていうか、それを大森望が今さら言うか、って気はするよ。この問題で大森望が果たした「愉快犯」としての責任はそれなりに大きかったと思うぞ。
 
ついでに言うと、あのとき僕の掲示板に書いていた人は必ずしも「SFの人」ではない

25. 大森望 Website — March 17, 2008 @15:52:41

当時、擬人化問題についてはとくに発言してなかったと思いますが。少なくともフェアネスという論点はなかったような……。自分がなにを言ったか全然覚えてないけど。

#自分の掲示板のログをちょっとgoogleしたらあまりに厖大なのでただちに撤退。これはこれで長い歴史があるなあ……。

UpOwner Comment きくち  March 17, 2008 @16:36:14

「擬人化」はあまり大きな問題ではなくて、その後の「SFの人は」ってやつね。長い歴史と過去なので、ほじくり返さない方がいいと思うぞ。
 
上に書いたのはあくまでも「擬人化」についての文学的な話で、それ以外のさまざまな問題について書くつもりはほとんどない
 
ちなみに、フェアネスについての僕の意見は当時どこにも公開しなかったと思います。これは解釈だし、そういう「文学論」ができるような雰囲気ではなかったと記憶しますね。僕から直接その話を聞いた人は何人かいるはずですけど。

27. キタヤマ — March 17, 2008 @17:13:19

きくちさんの
>それから、笑いの話はこの対談本にほとんど出てきてないと思うんだけど。
芹沢さんの
>そもそも瀬名氏によるパラサイト・イブの話自体、書評との絡みは薄いでしょう。これはむしろ著者批判の一貫であって、直接当該書の内容に関係ない。

を読んで、(瀬名さんの記述から)笑いの話が本に書いてあるというのは、勘違いと分かりました。失礼しました。
それでも違和感は残ります。
芹沢さん
>で、それを受けて「書評とは関係ない」ことを認識の上で菊池氏の「当時の話」があるわけで。
ということですが、
きくちさんご自身
>昔の話を思い出したので、書いてみた。重ね重ね勝手な言い草かもしれん。
と書きつつ、なぜ長々と、擬人化やジャンルの話をされるのか?
芹沢さんが
>勘違いされ易いことでもあるんですが、ここってあくまで菊池氏のWeblogであって公開議論用掲示板でも何でもないんですよね。だから、議論として噛み合わない「関連エピソード」が語られたって何の不思議もないわけで。
とおっしゃるように、ネットではよく見られるやりとりですが、私には奇妙です。瀬名さんがパラサイト・イブを持ちだしたのは、「嘲笑」についての考えを述べるためだというのは明かです。きくちさんについての誤解があるなら、そうと、別のお考えがあるならそれを書かれればいいのではないでしょうか?(もちろん答える義務なんかないのですが。)
きくちさんが
>ただ、「科学とは何か」については意見の一致しない部分があり、もしかすると一度きちんと議論したほうがいいのかなあという気もする。僕は瀬名さんに「科学を伝える人」としての役割を期待しているので。
とお思いなら、なおのことそう思います。

Owner Comment きくち  March 17, 2008 @17:39:06

僕がここで擬人化問題について書いたのは、大森氏のコメントへの返事に書いたように、「ミトコンドリア擬人化問題」についての僕なりの「文学的回答」を公にしたことがないからなんですけどね。
公にしなかった理由は当時はそんな雰囲気じゃなかったからで、今頃になってまたその話が出てきたから、書いておくよい機会かなと思ったわけです。
なぜ長々と書くかと言われれば、「擬人化問題」とはそういう問題だからです。もともと文学の問題なんですよ。作家の意図とおりに読者は読まなかった。それはなぜか、ということです。
 
それ以上のことについて書く気はあんまりないんですけどね。瀬名さんは当時そう考えたということであって、水掛け論にしかならないと思う。たとえば、「ベストセラー作家と一般読者は対等なのか」とか、そんな話を今繰り返すことにそれほど意味があるとは思えません。
  
「科学とは何か」については、またいずれ議論できればと思いますが。

29. 技術開発者 — March 17, 2008 @17:05:29

こんにちは、きくちさん。

 せっかく読ませていただいたのに、何も書かないのは問題なので書きますね。瀬名さんは「だらだらと愚痴ばかり」みたいに捉えられて「良くない」と思われた見たいだけと、私にとっては「考えを深める」上でとてもその「問題点の羅列」が役に立つと思っています。その走りみたいなことを別のエントリーのコメントで書き始めてみたんですけどね。

 なんていうか、ある人と話をしていて「最近は政府が出す白書が役に立たない」なんて言われたんですね。実は昔の白書というのはまさにデータの羅列でして、そのデータの示すところに問題が含まれていれば「問題である」とか「問題が生じ始めている」とか書いてあるだけだったんです。まあうまく行っている部分でも「好調である」しか書いてないんですけどね(笑)。それが政治家の主導が大きくなってから、プロパガンダ化している面があって、政治家が「こうやればこの問題は解決出来る」なんて部分ばかり盛り込もうとするから、データにも偏向が生じていて白書から現状の解析をしようとするとどうにも「役に立たない」らしいんですね。そういう話なんかを瀬名さんのブログを読みながら思い出してしまったわけです。

 なんていうか、私なんかは例えば「欲求の商業化」という切り口で考えてみたいとか思うわけです。そういう「視点をもってデータを解析する」をやりたいときには、いろんな問題が優劣や対策とか考えないで並列に並んでいてくれる方が有りがたいわけです。なんていうか、まさに「なにかの周辺をぐるぐる回っているだけ」だからこそ、読み手がその中心にあるものを考えて「一種の検証」に使える面があるわけですね。「周りで列挙された問題点のこれくらいはこの仮定で説明出来そうだ」とかね(笑)。

 そういう意味で、私にとってはとても役に立つ対談集でした。

30. 海法 — March 17, 2008 @19:08:11

直接、関係ないですが、楽しみにしてるウェブ漫画で、ちょうど似たような話題が出ていたので。
http://xkcd.com/397/Link
「Myth Busters」(怪しい伝説)は、巷間言われる、色々な都市伝説を実際に実験して確かめてしまおう、という番組。

「科学的に厳密な意味での科学的実験ではないかもしれない。だが、人類を非科学の闇からすくい上げるにあたり、信念を実験によって確かめる姿勢を見せることで、Myth Bustersは百の厳密性の講義よりも役に立っているのだ。」

これは、確かにそうだなぁと思います。
例えば「水伝」をMyth Busters的に否定してみせることも、意義はあると思う。

ただ一方で、「「水からの伝言」が事実でないというためには、実験で確かめなくてはいけないのでは?」」という質問に対しての答えは「NO」だし、そこを譲ると悲惨なことになる、とも思います。

とりとめない話ですいません。

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