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イージス艦「あたご」安全航行装置 機能せぬまま1年

2008年03月17日17時47分

 マグロはえ縄漁船清徳丸と衝突した海上自衛隊のイージス艦「あたご」は、安全航行のために周囲の船に自分の位置を電波で知らせる装置を1年前から搭載していたにもかかわらず、総務省の事前審査の遅れから装置が機能していなかったことが17日、わかった。装置は漁船のような小型船には設置義務がなく、今回の事故との直接的な関連性はないが、第3管区海上保安本部は「当時、東京湾近海はかなり混雑しており、装置が稼働していればもっと慎重な運航ができた」とみている。

図

「あたご」の位置

 船舶自動識別装置(AIS)と呼ばれ、海上保安庁の無線設備の支援を得て日本近海を航行する船同士が船籍、速度、方向、位置などの情報を送受信したり、無線で連絡を取りあったりする。

 船舶安全法で04年から国際航海に従事する船は原則すべて、それ以外の船は500トン以上に義務づけられた。装置は発信機能を持つため、個々の船は総務省から無線局の開設許可が必要だ。

 一方、自衛艦は船舶安全法の適用外で搭載の義務はない。しかし、東京湾や近海などでは船の航行が多いことから、06年5月、防衛庁(当時)はAIS搭載の方針を決め、総務省に対し申請の手続きを開始。昨年4月から「あたご」など15隻に装置を設置した。

 ところが、通常の船舶なら1カ月程度で承認が済むのに総務省が事前審査に手間取り、15隻ともAISが使えない状態が続いていた。防衛省は新年度、さらに45隻に搭載を予定し、総務省から事前審査の連絡を待つ状態だった。これに対し、総務省は朝日新聞の取材を受けた翌日の13日、防衛省に本申請するよう要請、申請書を受けると、即日、許可した。

 朝日新聞社が入手した海上保安庁作成のAISを使った海図によると、衝突事故のあった2月19日午前4時7分、東京湾周辺海域をAISを搭載して航行していた船は約80隻。多くは東京湾に向けて航行し、朝の入港を控え、混雑していたことがわかる。

 第3管区海上保安本部の船越良行交通部長は「AISは船の情報が瞬時にわかり、こちらも誘導しやすい。自衛艦も早急に態勢を整えてほしかった」と話す。

 これに対し、総務省の名執潔・衛星移動通信課長は「防衛省の陸、海、空から無線の許認可に関する多数の申請が来ているが、自衛艦のAISを優先するようにとの要請はなかった。(今回の事故もあり)早急に許可を出すことにした」と話している。

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