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社説天声人語

天声人語

2008年03月17日(月曜日)付

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 立っている時の消費カロリーは座っている時より多い。揺れる電車内では倍にもなるらしい。目上の前で立つのは、あなたより疲れる姿勢で敬意を示していますという、無言の訴えだろう▼卒業式から入学式へと続くこの時期、学校は国への「敬意の姿勢」で満たされる。君が代に起立しない教職員は、国歌と国旗を前にして他より消費カロリーが少ない、つまり国への敬意が足りぬと処分される▼永井愛さん作・演出の芝居「歌わせたい男たち」の再演が東京から始まった。毎年立たない社会科教諭、説得に努める校長、戸惑う伴奏係の音楽講師。卒業式直前の騒動に笑いながらも、観客は「内心の自由」を考えさせられる▼不起立教諭の名古屋弁をまねて「立ってちょ〜、歌ってちょ〜」とすがる校長とて、教育委員会と現場の間でもがく善人だ。善人がみな困り果てる不条理。永井さんが再演の理由を語る。「初演から2年半、学校の状況は変わっていない。演劇賞をもらった私たちだけハッピーで終わっていいのかと」▼減給や停職は生活に響くから、渋々立つ先生が増えたそうだ。昨今、式の運営で自由になるのは紅白幕ぐらいとも聞く。踏み絵とお仕着せで晴れの日は整然と、しかし息苦しく運ぶ▼五輪の君が代に歓喜し、心細い海外で大使館の日の丸に安らぐ。国への思いはそうした自発の感情の積み重ねで、一時の強制でどうなるものでもない。様々な内心と人間関係を乱し、学校が費やすカロリーは甚大だ。そのまま喜劇になるような現実は笑えない。

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