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Ｓは早くも帰りのことを考えてか、ネルソン君に文句をブツブツ言っている。
エレベーターを付ければいいとかフィリピンではポーターがいたのにここではいないのかとか・・その他諸々・色々な熱弁である。
ネルソン君・・そんなＳの小言に嫌気がさしたのか・・うっかり失言「Ｓさんの器材は僕が担いでのぼります」・・だって・・・あ〜あ、言っちゃった・・Ｓはその言葉を誘導していたんだ〜よ！
Ｓ・・・悪くてずるい奴！
エントリー口に立つと海面の一部が青い光を放っていた。
飛び込むと・・思わず“ウオー”と声を上げたくなる風景・・。
最近、沖縄でも青の洞窟とかいうのが大人気で、スノーケルツアーを企画する業者が大儲けとのことだが幻想的な景観に呆然と見とれてしまった。
洞窟を抜けて外海に出ると、透明度・透視度抜群の明るい水間が広がっていた。
様々な魚が群れているのが見える・・しかし、僕たちは水深１０ｍをキープしてひたすら沖に向かう。
海底は緩やかな傾斜で沖へと向かっている・・この傾斜角だと水深５０ｍはまだまだ先かなと思った。
横を見るとＳとＫの姿が青い水をバックに飛んでいる。
そうだ、僕が初めて海を覗いた時・・三次元の世界をすごいと思ったが、ここサイパンの水は限りなく透明に近い気がした。
それからどのくらい泳いだろうか・・・海底までの目視距離２０ｍ・・おそらく水深３０ｍ位かと思った時、ネルソン君が停止して潜行のサインを送ってきた。
すぐさま垂直潜行に移る・・何だよ・・３０ｍかよ・・と思っていたが、海底に着いてダイブコンユーターに目をやると、示す水深は５１ｍ。
あれま！本当に５０ｍあるよ！透明度が良すぎて目測距離におおきな誤差を生じていたようだ。
無減圧滞在時間を確認・・・ここまできて無減圧はないか・・・カメラの水没の有無を確認・・大丈夫だろうとはおもっていたが４０ｍ耐圧と表記されたケースも無事・・まてよ、水没はしなくてもシャッターが切れなくなるという話も聞いたことがあるぞ・・・とりあえず仲間を撮ってみるか・・・よ〜し！シャッター動作正常！・・・現在のフロア滞在時間は・・５分か・・・ヘルフリッチらしき生物はどこにもいないぞ！・・・何かいちいち頭を使って考えている節があるぞ・・・窒素酔い？・・・エート、１＋１＝２・２＋２＝４・・・１６＋１６＝３２・・・ＯＫ！
海底の岩の穴などを覗きながら計算やってる事自体・・酔っ払いかなあ？
やがて、ネルソン君が指差す所をみるとなにやらハタタテハゼみたいな奴が背鰭をピョコピョコ動かしながら漂っているではないか！
あいや〜！これがヘルフリッチ？ハタタテハゼじゃん！（実はシコンハタタテハゼって言うんだってさ）
シコンだろうがウコンだろうがハタタテハゼに変わりないじゃん！
知らないってことは恐ろしい、ハゼ好きダイバーにはあこがれの種類らしいが、大物を想像していた僕にとっては予想外のただのハゼ！
一応、お義理ですごいね〜という表情とジェスチャーでネルソン君を褒め称え・・僕って・・いい人！
一応カメラにチャチャッと撮って・・その辺の徘徊に移りました。
何か面白い奴いないかな〜・・何も見つけられませんでした。
Ｋは、ヘルフリッチにへばりついて写真を撮ってます。（Ｋは大のハゼ好きなのです）
Ｓは僕同様、徘徊を始めています。
コンピューターと残圧を確認・・そろそろ戻らないとやばいぞ！
相棒達を見渡すとＳもネルソン君もそろそろ浮上開始時を認識している様子・・Ｋは夢中。
ネルソン君がＫを促しながら浮上のサインを送ってくる。
往路はネルソン君の後を散開してついてきたが・・例によって浮上はマイペース。
海底斜面を洞窟方向に向かって泳ぎながら・・海底の様子も観ながら深度を上げる。
洞窟の入口が見えた時点で、Ｄコンピュータは減圧停止１５分を表示していた。
洞窟内で減圧停止・・じっと青い光につつまれながら時間が経つのを待つ。
エントリーして外海に出て行くグループ、外海から戻ってきて上がって行くグループが何組あっただろうか・・だんだん青の世界も飽きてきて・・徘徊がはじまったが何も居ない。
何もしないで１５分・・ボクシング５ラウンド・・結構大変だね・・などと改めて思った。
エキジット後・・目の前にそびえる長い階段。
ネルソン君・・自分の器材のほかにＳの器材を担いで上って行く・・・
本当にいい人は・・僕じゃない・・・ネルソン君だった！
ここに謹んで訂正します。
Ｓ・・・悪い奴！
Ｋ・・・ずるい奴！
僕・・・いい人！
ネルソン君・・・とってもいい人！
これにて、ラウラウ＆グロット・・・一見落着です。（一見して落着です）
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