◇「凍りついた心解けた」
新たな支援策となる改正「中国帰国者支援法」が成立したことを受け、残留孤児訴訟長野原告団は7日、長野地裁(近藤ルミ子裁判長)で係争中だった国家賠償請求訴訟を取り下げた。最後の意見陳述で原告団副団長の石坂万寿美さん(65)=松本市=は「何十年も凍りついていた心がやっと解けた」と述べた。04年4月の提訴以来、4年間にわたった訴訟は終結した。
昨年、成立した改正「中国帰国者支援法」は▽保険料を国が全額納め、基礎年金を満額(月6万6000円)支給する▽生活保護をやめ、生活支援金(最大月8万円)を給付する--という内容。原告側の訴訟取り下げに対し、被告の国側も「支援策を誠実に実行する」と同意した。
原告の一人、横田花子さん(63)=飯島町=の2カ月間の生活費はこれまで、年金と県からの支援金を合わせて5万円だけだった。横田さんは「日本語を話せないので仕事もなく、生活は大変だった。法律が施行されれば少しは楽になるでしょう」と笑みを浮かべた。弁護団長の下平秀弘弁護士は「老後の生活保障を大きく前進させた」と評価した。
一方、支援策にも課題はある。弁護団によると、預金額によって支援から外される人がいるほか、60歳以前に残留孤児の配偶者を亡くした人も支援の対象外となる。原告団長の清水巌さん(67)=長野市=は、原告団を母体に自助組織を設立することを明かし、「自分たちの力で生活を改善していくよう努力したい」と語った。
同訴訟には県内の残留孤児ら79人が参加。「日本への早期帰国措置を怠り、帰国後も十分な支援をしなかった」として、国に1人当たり3300万円の支払いを求めていた。【川崎桂吾】
毎日新聞 2008年3月8日