      
ダイビングサービスを経営するＳが社員旅行でサイパンに行くという。
僕もその旅行に同行することになった。
サイパンで使ったダイビングショップはＭ．Ｏ．Ｃ・・名前は忘れたが日本人女性のガイドさんが僕らの最初の担当だった。
そして、僕が乗ったこともない大型の外車で快適な道から未舗装のガタガタ道へ・・サイパン初ダイビングと言うか、海外２回目の僕は気分ウキウキ気分は上等！
もうすぐポイントに着くぞ！と気分を高ぶらせていた。
着いたポイントは“ラウラウビーチ”・・海が青い・・水も綺麗だピカピカだ〜！早く入りたい！
しかし、この時点で、ガイドさんに悲劇が始まるのである。
Ｓがポツリと僕に言った・・「ここ、めちゃくちゃつまんねーぜ！」 僕「・・・・」
車から降りた途端「何だよ！こんな所かよ！潜りたくねえな！つまんねえよ！」・・と大声でＳ。
「チェックダイブかよ・・こんなとこ潜ってもつまらないですよね」・・と小声でＳに言うＫ。
「でも、結構きれいじゃない？」と僕・・・内心は「つまらなそう」と思ったのだが、実は前日ホテルに着いたのも束の間・・海パンにはきかえて目の前のビーチにとびこんだのだが、行けども行けどもクロナマコの海、しかも透視度も予想以下・・・早く綺麗な海に浸かりたかったのである。
Ｓの声に「そんなことないですよ〜・・綺麗な魚もたくさんいますし・・ここでしか見られない生物もいますから・・・」と、懸命にフォローするガイドさん。
一緒に来た別グループ（ガイドはアジア系の男性・ゲストは日本人の女の子２人）はすでに器材の準備を始めている。
「まあ、とりあえず来ちゃったんだし・・・入ってみようぜ」・・と僕。
ごねるＳ・・・悪い奴！
陰でＳを焚きつけるＫ・・・ずるい奴！
仲をとって平穏に収めようとする僕・・・いい人！
器材を準備してブリーフィングを行おうとするガイドさん。
ガイドさんより手早く器材を装着して海に向かって歩きはじめる３人・・・
ガイドさんは追いかけながら説明を始めた。
“膝ぐらいの深さが続きエントリーポイントから急に深くなっている事を話しているとき”には、すでに膝くらいのところを進んでいたし・・沖に向かってパイプがはしっていますのでそれに沿って・・・”と海中の様子を話しているのはほとんど聞いてないし、“岩が尖っていてちょっとあぶないと思うかもしれませんが、ロープがあるから大丈夫ですよ・・足元に気をつけて順番に・・”と親切なアドバイスを頂いた直後・・３人共一斉にジャイアントで飛び込んでしまうし・・ガイドさん、おそらく、こんな客・・初めてだろうな・・。
ラウラウビーチの海・・透視度２５ｍ＋はありそうで、日本で日ごろ潜っている１５ｍで「今日は最高だなあ」などと言っているのが情けなく思う。
僕たちのラウラウビーチファンダイビング・・・何故かガイドの前を行くのは客で、泳ぐ速さもおそらくガイドさんの日常より数段早いと思われ、ガイドさんが必死で後を追う。
俺たち途中で止まって振り返り、マスクを完全に外してレギュレーターも放り出し、ガイドさんが追いついたところでレギュレーターをリカバリーし、マスク装着＆クリアをすべて着底なしで行うと・・一斉にガイドさんにＯＫサインをだして思い思いに散らばった。
これは、事前に打ち合わせしていたわけではなく、いわゆるアイコンタクト・以心伝心である。
僕は一応ガイドさんに、ここで待ってていいよ・・３人とも（多分）見える範囲にはいるから・・ここに戻ってくるから・・この辺にいてください・・の意を伝え（たぶん伝わったと思うのだが・・陸に上がってから確認はできなかった・・それは、ガイドさんが口をきいてくれなくなったからだ）その場を離れた・・・ガイドさんを気遣う僕・・・やっぱり いい人！
実はこれ・・Ｓのもとでダイブマスター認定を受けた奴が受ける洗礼なのである。
新人のガイドにこれをやるのである。
散らばった連中は、もちろん見えるところになどいつまでもいない。
対象者から距離は離れないが・・対象者の隙を見つけて岩などを利用して隠れるのである。
排気もタイミングに注意して行い、最終的には５分以内に対象者の死角（主に上方）に集合する。
ラウラウビーチでは、現地ガイドにこれを仕掛けたのである・・・つまらない海で面白いことといったらこれくらいしかないっしょ！である。
でも・・・これ結構難しかったです。
透視度が良いし、水深浅いし・・・岩陰を息止めて（といっても小さい泡はだしてますが・・・）かなり移動してみたり・・・最終的には１０分後には見事発見されないままガイドさんの真上に３人集合できましたけど・・・。
ガイドさん・・最初は懸命にキョロキョロしてましたが、途中であきらめたのか（もしかして、あきらめより怒り？）あまり探さなくなりました・・・これは僕らにとっては好都合！思う壺です。
ガイドさんが残圧計を見ています。
こちらの残圧は１００＋ですが、潜水時間は５０分・・そろそろ戻るだろうなと思っていると、いよいよあきらめたのかパイプラインに沿って戻り始めるガイドさん。
僕らは静かにガイドさんの後ろに潜行、後をついていきました。
陸に上がる時点ではガイドさんと一緒・・外から見たら普通のファンダイブのエキジット風景。
こっそりガイドさんの残圧計を盗み見ると・・５０を切って３０程度・・ずいぶん減ってる・・。
きっと心配したんだろうなあ・・・ちょっと申し訳なく思う僕でした。
全然気にしてないＳ・・・悪い奴！
「ごめんね〜、心配した〜」とガイドに声をかけて、
僕にこっそり「おもしろかったですね」と言ったＫ・・・ずるい奴！
多少なりとも申し訳なく思った僕・・・いい人！
ガイドさんとアジア系外人男性ガイドがなにやらこちらをチラチラ見ながら話をしています。
やばいかも・・・何か文句言われて追い出されたら・・午後の２本目なくなるぞ。
やがて男性ガイドがやってきて、自己紹介を始めた。
彼の名前はネルソン君・・・フィリピン出身だという。
そして、午後のガイドは彼に替わるという。
そして、ネルソン君から提案がなされた。
午後案内するポイントはグロット・・・洞窟を抜けて外海に出るサイパンでも有名なスポットだ。
もし、希望するならヘルフリッチを見せたいが・・置きに向かってかなり泳がなければならないし、水深もかなり深く ５０ｍ＋だと言う。
僕は魚の種類にはそれほど詳しくはない・・ヘルフリッチって何者だろう？きっとすごい奴に違いない！
勝手に想像したヘルフリッチ・・マンタみたいなやつだろか？サメの仲間？想像を膨らませる。
ＳとＫは「本当にヘルフリッチが見れるのか？」と聞いている・・・きっとすごいやつだ。
ヘルフリッチがどんな奴なのか聞けば良いのだが、そこはちっぽけなプライドが許さない。
知らなくても知ってるふりを決め込んだ。
「どうしますか？ヘルフリッチ行きますか？穴の周辺で楽しみますか？」
ネルソン君・・・どうやら女性ガイドさんの敵討ちかな？
俺らが水深５０ｍにビビルと思ってんだろか・・・。
３人ほぼ同時に出た言葉が・・「行こうぜ！」
今度はネルソン君が「本当に行きますか・・たくさん泳ぎますよ」
「泳ぐのは全然ＯＫ！ヘルフリッチ本当にＯＫ？」とＳが言う。
そして、行くことに決定！・・ヘルフリッチは本当に居るのか？
水深５０ｍ＋・・・当然減圧潜水になる。
行ってもし居なかったら・・・空しい減圧停止になるだろうなあと、期待半分・ちょっと引く気持ち半分の僕でした。
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