医療機関による救急搬送受け入れ拒否問題の背景には、医師不足や救急病院の減少など医療現場が抱える構造的問題があり、政府全体の取り組みが急務になっている。
医師不足は、平成16年度に導入された新臨床研修制度をきっかけに深刻化。新人医師が2年間、大学の医局を離れて研修に専念できる仕組みになったが、その裏で、医局が地方に派遣した医師を呼び戻すようになり、自治体病院を中心に医師が足りなくなってきた。このため、地域によっては勤務医の連続勤務時間が、当直を含めると36時間を超えるケースも珍しくない。
これに追い打ちをかけているのが救急病院の減少だ。厚生労働省によると、入院可能な2次救急病院は19年3月末現在、全国で3153施設で、15年より118施設減。医師不足が病院を救急業務からの撤退に追い込む例も見られる。
自治体病院の経営に詳しい伊関友伸・城西大准教授は「救急の現場は患者を受け入れたくてもできないのが実態。医師が怠けているわけではない」と強調する。
政府はようやく重い腰を上げ、20年度から10年間は大学医学部の定員を増やすことを決めたが、地方のある病院長は「暫定措置にすぎない。医療費を抑制する国の基本的な考え方を変えなければ、医師不足は解消しない」と訴えている。
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