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小浜に対抗、平利・栗きんとん 米大統領選あやかり列島

2008年03月05日03時04分

 福井県小浜(おばま)市がオバマ氏に必勝だるまを贈れば、秋田県の旅館・平利(ひらり)はヒラリー・クリントン氏にあやかった栗きんとんを客に出す。米大統領選の民主党有力候補の名にちなんだ単なるダジャレだが、民主党の指名候補選びもまさに大詰め。日本での勝手な応援合戦はどんな人々が楽しんでいるのか。

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小浜市がオバマ氏に贈った必勝だるま

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オバマ氏からの手紙を手にする村上利夫市長=福井県小浜市役所で

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旅館・平利の「平利・栗きんとん」

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筑水キャニコムの運搬車「Hillary」

 テキサス、オハイオなどの州で予備選がある日本時間5日、福井県小浜市では市民がオバマ氏応援の集いを開く。

 「I ● OBAMA」のはちまきや似顔絵Tシャツ姿でテレビの開票速報を見守る。ダンス教室の女性ら20人で結成したオバマガールズが踊り、特製オバマまんじゅうや、サバなどを原料に作ったオバマ・ハンバーグも披露される予定だ。

 きっかけは06年12月の民放ニュース。オバマ氏が来日時、空港で小浜市出身の税関職員と言葉を交わし、小浜という地名を知ったという報道だった。07年1月には村上利夫市長が若狭塗箸(ぬりばし)をオバマ氏に贈った。今年2月には商店主ら約30人が「オバマ候補を勝手に応援する会」を結成。市は「追い風は確実に貴殿に吹いています」との市長の手紙と必勝だるまを贈った。

 今月3日、オバマ氏から返礼の手紙が届いた。ワシントンの消印があった。市職員は「まさか、本当に」と恐る恐る封を切った。手紙には直筆らしい署名が。急いで隣室の市長に報告した。

 丁寧な文面に、村上市長は「品格を感じさせる手紙で、誠実な印象」と感激したという。

 NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の舞台として注目を集める小浜市だが、地元経済は低迷中。地域経済を支えてきた若狭松下電器(従業員約500人)が00年に撤退。JR小浜駅前商店街は空き店舗が目立つ。

 2期目の村上市長はアイデア市長として知られる。だが、目立つことを嫌う風土で、今回のブームにも当初「悪のり」との批判が出た。だが市幹部は「オバマ氏が誠実な人柄とわかり、市民の応援も素直な善意で広がった」と話す。米紙ニューヨーク・タイムズなど内外メディアの取材は120件を超えた。

 長崎県・島原半島の小浜(おばま)温泉が本格的にオバマ氏の応援を始めたのは今年2月から。観光協会の事務所には「必勝 オバマ氏」のげき文やダルマを置き、模擬投票所を開設。観光客らが投票できるようにした。3日時点の中間集計ではオバマ氏の圧勝だ。

 小浜温泉は源泉の温度105度という熱さが自慢。ただ、06年の宿泊者数は約21万人と雲仙普賢岳の噴火前の半分に減っている。知名度アップが課題だ。

 観光協会事務局長の小林猶敏さん(52)は「熱い温泉地の思いを熱い男に伝えたい。大統領になったら、ぜひ小浜温泉に入ってほしい」と話す。

 秋田県横手市のしにせ旅館「平利(ひらり)」。6代目おかみ平田容子さん(57)が「平利・栗きんとん」の女性客への提供を決めたのは2月下旬だ。

 今年1月、東京の民放テレビから「オバマ氏関連の町が語呂合わせで宣伝している。お宅はヒラリーさんで何かやらないのか」と問い合わせがあった。あまり興味はなかったが、「横手を売り出そう」という熱心な常連客の勧めで、その気になった。

 明治元年の創業で、宿の名は2代目平田利助にちなむ。戊辰戦争で官軍の宿舎に使われた国登録有形文化財だったが、04年2月、ボイラー室からの出火で建物や竹久夢二ら常連客の残した書画などを焼失した。

 地域の人たちが「地元の誇りを消すな」と解体作業や食事の差し入れなどを手伝ってくれた。母親から6代目を引き継いだ平田さんらが奔走し、9カ月後に再開した。

 「同じ女性として苦境に陥ったヒラリーさんを心情的に応援したくなった」と平田さん。

 農機具メーカー筑水キャニコム(福岡県うきは市)の包行(かねゆき)均社長(58)は「ヒラリーさんとは長い縁がある。何とか逆転を」と祈る気持ちだ。

 同社は昨春、主力商品の立ち乗り式運搬車「ひらり」を14年ぶりに全面改良し、名前をヒラリー氏と同じつづりの「Hillary」に変えた。秒速約6センチの超低速で動く。収穫作業をしながら作物を積み込み、ひらりと飛び乗れる車だ。

 同社は草刈り機に「まさお」と名付けるなど独創的な商品名が自慢。今回、名前を改めたのは同機種の海外販売を考えてのこと。北米で昨年から試験的に販売を始めている。包行社長は「仮にヒラリー氏が負けても売れないようなものは作っていない。性能を前面に出して売り込みたい」と話す。

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