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医師会立の産科診療所開院へ
鎌倉市医師会と鎌倉市 来年1月開院へ 市が費用負担し医師会が運営
2008.3.5
鎌倉市医師会と鎌倉市は、来年1月にも医師会立の産科診療所を開設する。現在、鎌倉市には分娩を取り扱う医療機関が1施設しかない。この状況を市と医師会は、緊急課題と判断。新たな産院を開設し、市内での分娩数を増加させたい考えだ。初年度は90件、それ以降は年間300件の取り扱いを目指す。産院は、医師会が運営を行い、市が施設費などの費用面を負担する。鎌倉市では、施設工事費・運営費・家賃など初年度に3億4500万円を補助する考えで、2月26日に公表された来年度の予算案にも盛り込んだ。医師会が産院を運営するのは国内初。
現在、鎌倉市民として年間1200〜1300人の誕生がある。しかし、市内で分娩を行えるのは湘南鎌倉総合病院の1施設のみで、その3割の分娩を同施設が行っている。
一方、鎌倉市医師会に加盟する医療機関のうち、妊婦検診などを行う産科医療機関は8施設あるが、分娩を取り扱う医療機関はない。
そのため、妊婦検診を市内の医療機関で受けていても、分娩は東京都内や横浜市、逗子市など周辺地域で行っているケースが大半を占めている。
里帰り出産を希望する人の声に応えることもできず、いわゆる“鎌倉生まれ・鎌倉育ち”が少ないのが現状だ。
このような状況から、鎌倉市は鎌倉市医師会とタッグを組み、検討を重ねてきた。
鎌倉市役所健康福祉部市民健康課の山田幸文課長は、「湘南鎌倉総合病院の負担を軽減できることと、市民が自宅の近くで出産できる点が大きい」と産院開設の意義を強調する。
● 初年度は3億4500万円を補助
新たに建設する産院は、JR鎌倉駅の駅前を予定する。交通の便が良く、湘南鎌倉総合病院から一定程度の距離が離れていることから当地を選んだ。現在の大巧寺が持つデイケアセンターを改装する。
施設は、建物延べ面積は638平方メートル(193坪)で2階建て。4月から改修の設計・入札を行い、7月から改修工事に入る。現在のところ、9ベッドの確保を予定しているという。
鎌倉市は、来年度の予算案に工事費1億7600万円、運営費1億2500万円のほか、建物の家賃2520万円、設備リース費用1870万円を計上した。予算案は今月25日に開かれる市議会で正式に承認される予定だ。
山田課長は、「運営費は初年度のみで済むのでは」と見通す。目標数値として掲げる分娩300件を行えば、赤字とならず、医師の報酬なども収益で賄えると試算する。
一方で、見込んだ収益が得られない場合には、「初年度の運営をみて、その後の費用負担は検討する」と話す。市では来年度から、産院の運営に関する検討会も立ち上げる考え。医師のほか、税理士などに委員となってもらい、効率的な運営形態を探るという。
● スタッフ確保は医師会のNWを活用
一方、産院開設で課題となるのが、産科医をはじめとしたメディカルスタッフの確保だ。産院では、産科医3人(常勤2人、非常勤1人)、小児科医1人(非常勤)、助産師7人(常勤)、看護師5人(常勤)、薬剤師1人のほか、事務員5人、業務員・配ぜんのパート5人を確保する予定。
スタッフは、「医師会の持つネットワークを活用して、探す予定」と鎌倉市医師会の細谷明美会長代理は話す。
分娩時や手術時に必要な麻酔科医については、非常勤で雇用する。人材は、鎌倉市医師会の会員の中に引き受け手を探す考えだ。
助産師については、すでに日本助産師会に協力を要請。現在働いていない助産師の中から、人材の掘り起こしを進める。
産院では、「帝王切開は行うが、基本的には正常分娩のみを引き受ける」と細谷氏。緊急手術に備え、神奈川県立子ども医療センター、聖マリアンナ病院、東海大、北里大など周産期センターやNICUがある医療機関との連携体制も整える。
ただ、医師会員の間からは、医療訴訟や倒産した際のリスクに対する不安も聞かれたという。
そのため、医師会としては、あらゆるケースを想定し、市と協定を結ぶ考えで、内容については「今後、詰めていく」(細谷氏)という。
細谷氏は、「医師会としては大きな事業。ぜひ早く開設にこぎ着けたい」と意欲をみせる。医師不足が叫ばれる中、「鎌倉市でも状況は深刻」と細谷氏。全国的な産科医不足が指摘される中、「1つのモデルケースになれば」と期待感を示した。
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