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【社説】自殺者相次ぐ泰安、一刻も早い救済措置を

 忠清南道泰安で今月18日、刺身屋を経営する男性がシンナーを浴びて焼身自殺を図り、重体となる事件があった。また今月10日にはカキの養殖業者が自殺し、15日にはアサリ漁で生計を立てていた老人が自殺した。原油流出による汚染で収入源を絶たれた住民が、次々に人生を放棄し、自ら命を絶っているのだ。このように状況が悪化しているにもかかわらず、政府による生計補助金や国民から集まった寄付金はまだ被害者である住民たちには届いていない。

 原油流出事故が起きてから、今日で43日目となる。政府は先月28日に生計補助金300億ウォン(約33億9000万ウォン)を忠清南道に伝達しており、国民から集まった義援金も300億ウォン近くに達している。一方関係者らは、現金支給についての基準がまだ定まらないため、支給が遅れているとしている。六つの市や郡が、自治体ごとの配分をめぐって争っているという話も聞こえる。何とも情けない話だ。

 原油流出事故の被害者は5万世帯に上り、日々の生計を立てることすらままならない状況にある。売り物にできる水産物もなく、訪れる客もいない。真冬の空の下を一日中海岸で油の除去作業に明け暮れているだけだ。それにもかかわらず、公務員は基準が決まらないだとか、合意が得られていないといった理由で金を積んだままにしている。市や郡の間で意見に違いがあるなら、徹夜で議論してでも合意に導くべきではないのか。どうしても無理だというなら、大枠で暫定的な基準を設け、細かい規則は後で調整してもよいはずだ。中央政府と道がリーダーシップを発揮できず時間を無駄にしているがゆえに、次々と自殺者が出るような事態となったのだ。

 原油流出被害の補償についても、早期の決着のために政府が積極的に取り組むべきだ。原油流出被害はタンカー船主側の保険会社がまず1300億ウォン(約146億9000万ウォン)を負担し、残りは国際油濁補償基金(IOPC基金)が被害者側との合意を経て支給することになっている。1995年のシープリンス号事故の際には2年後になってやっと補償金の支払いが始まった。補償金の支払いが遅れれば遅れるほど、経済的に追い込まれた漁師らはIOPCとの交渉でも不利な条件で臨まなくてはならなくなる。

 今回の事故を起こしたクレーン船はサムスン重工業の船であり、タンカーが運んでいた原油は現代オイルバンクのものだった。もし法的な補償責任がないとしても、道義的な責任を逃れることはできない。突然収入源を失い、ぼうぜん自失の状態にある地元住民らを苦境から救い出すため、1日も早く何らかの措置が行われなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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