2008年02月02日

手塚治虫の「全作品」が合法的に二次利用可能という画期的試みもスルーされまくりという日本の悲劇

手塚治虫のあらゆる創作物を、期間限定で合法的に二次利用可能とし、広く一般から作品を募るという超画期的な試みが「人知れず」行われている。
経済産業省の委託により、日本動画協会と映像産業振興機構が共同で立ち上げた「オープンポスト(OpenPost)」というコンテンツ投稿サイトプロジェクトだ。

この試みが本来社会に与えるべきインパクトのデカさが、世間に全くと言っていいほど伝わってない。

 ダウンロード違法化やダビング10といった問題も確かに重要だが、それよりもこの素晴らしい試みがいまだに殆ど認知されていないという状況の方が個人的に危機感を感じる。コンテンツは「生み出して」ナンボだ。コンテンツ立国を目指すならそこが肝にならなければおかしい。

なぜこれほど認知されていないかという原因は明白。
基本的な告知宣伝不足に加え、その内容が余りに「判りづらい」のだ。もうワザとやってるのかと思う位。

まずは、肝心の投稿サイト「OpenPost」TOPページを見てみる。

http://openpost.jp/

「みんなの投稿コミュニティサイト Open Post.JP」

ページタイトルからいきなり萎える。


何のサイトかさっぱり判らない。ページ全体を見ても、サイトディレクションが根本的にずれてる。手塚プロダクションがあらゆる手塚作品の著作権をオープンにしたのは、ど素人にアトムのイラストを描かせる為ではあるまい。
サイト制作サイドがこの企画の意義を理解できていないとしか思えない。

OpenPostの概要を知るには、むしろNHK解説委員室ブログの方が判りやすいので興味のある方はこちらを参照した方が良い。


さて、OpenPostがなぜ「超画期的」なのかというと、公表場所と期間が限定されているとは言え、「手塚治虫の全作品におけるキャラクター、ストーリー、ロゴデザイン、美術設定などを自由に二次利用できる」という点だ。鉄腕アトム限定とかブラックジャック限定ならそれほど驚かない。


ところが、本サイトを含め他の紹介記事や告知を見ても、実は「全作品OK」とは一言も書いていない
それどころか二次利用可能な素材は限定されていると誤解されかねない表現が多々ある。

例えば、サイト上の「作品投稿の流れ」という部分の第2項にこう記述されている。

「②素材データベースから素材をダウンロードして作品を投稿」
 これを読むと、素材データベースに提供されているもののみ利用可能なのかと思ってしまう。

そして募集要項第2項には

サイト内にて提供されたテーマ作家の作品(キャラクター、ストーリー、ロゴデザイン、美術デザインなど)を活用したオリジナルの動画映像、マンガ、イラスト、脚本(小説)、商業デザイン、キャラクターデザイン。
  と明記してあって、これも一読するとサイト内の素材データベースから入手可能なものに限定されるのかとも読める。 しかし実際には、「サイト内にて提供された」は「作品」ではなく「テーマ作家」にかかっている様だ。 そもそも素材DBからは、ストーリーやロゴデザインデータが一切入手できない。また素材DBの説明文でも「参考資料に利用して」という記述があるし、何より素材DBに存在しないキャラクタやストーリーが普通に使用されている。 以上の点から事実上「全作品二次利用OK」と判断できる。

結局、最も重要な部分が全く明記されていない為に、結果としてユーザの混乱を招き投稿意欲を刺激できていない。これは宣伝告知上の致命的ミスだと思う。

現状ではこのサイトが盛り上がってるとはお世辞にも言いがたい。
しかしこの素晴らしい試みが惨憺たる状況のままで終わって欲しくない。うまくすると「良質な二次創作」がいかに「創造力と才能」を要求されるか、を世に知ってもらうチャンスでもある。
面白い「二次創作物」を創ることは、ある意味一次創作より難しい。

浦沢直樹の「PLUTO」のような大胆なリメイク作品を独自に創作してOpenPost上で発表する事も可能なのだ。とりあえずOpenPostが存続する3月末までに、そんな展開がこれから起こることを期待したい。

 

Posted by J2 at 2008年02月02日 22:25

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Comments

ご指摘の点も実にアレなのですが、実はもっと単純な注目されない理由が考えられます。極論ですけど。
「テヅカ・イズ・デッド」
いまさら手塚治虫なんて大昔のマンガ家の作品の二次利用が可能になったところで、だから何? らき☆すたやアイマスのほうが面白いし。という。そもそも投稿意欲を刺激するようなコンテンツではないのです。それほどにこの手の文化は水物と化しているのが現状です。つまり、「空気嫁」ということです。
ありていに申せば、この試みをもっと人気のあるコンテンツを抱える権利者、たとえば角川書店やサンライズなどが行えば、おそらく比較にならないほどの注目を集めるでしょう。

1: Yuu Arimura at 2008年02月03日 02:29

らき☆すたは、まあ、確かに面白いんだけど、
けど、「ブッダ」や「アドロフに告ぐ」をあらためて読み直すと、全然面白さの質が違うと思う。絵が古いので、最初少し面食らうけど、読み始めると本当止まらない。読み終わるといろいろなことを考える。
後の世代になっても残ると思う。

2: old man at 2008年02月03日 10:41

公開するとなると恐れ多いかも

3: zako at 2008年02月03日 13:11

このオープンポスト、いってしまえば版権物同人のしっかり認められたもの、という位置づけといったところでしょうか?
らき☆すたやアイマスは数あるハヤリモノの中の一つだと思いますし同人的な需要・供給としてはそういう物のほうが高いのは確かだと思います。

ただ、Yuu Arimuraさんの書き方はちょっと失礼じゃないですかね。手塚作品はディズニー映画や宮崎アニメのようなハヤリモノでくくれない、もっと大きい物だと思います。
だからこそ余計に手が出せないところもあるのかもしれませんが、大昔の漫画家だとか、だから何とか、言い方が乱暴すぎて読んでいて不愉快です。

4: ino at 2008年02月03日 13:14

コメントありがとうございます。

Yuu Arimuraさんのご指摘については、間違いなくそういう「側面」はあるかと思います。
しかし、「○○の終焉」「○○イズデッド」という言い回しが通用するのは、逆にそれがまだ終わっていない、生きているという証左でもあります。本当に終わった頃には最早それに言及する者もいなくなるからです。

古い作家だからこそ、「二次創作」の価値は高まるという側面もあります。重要なのはオリジナルの「質」です。

個人的に考える二次創作の理想は、本文でも触れた、浦沢直樹の「PLUTO」です。マンガにももっと「リメイク」という発想が定着してもいい。

ちなみに、アイマスやらき☆すたのような形での「注目」は、一過性のものである可能性が極めて高いのと、逆に二次創作のベクトルを画一化してしまう弊害もあるので、OpenPostには必要ないと思います。
「アイマスが5年後も愛されているか」、を想像してみると良いかと思います。

あと、ニコ動的な盛り上がりというのは、社会全体を俯瞰したときにまだまだ「内輪ウケ」にしか過ぎないという点も認識すべきです。

5: J2 ◆tFl6Dbsy1o at 2008年02月03日 13:44

宣伝なら田中圭一に依頼して、有力誌に載せるとかしたらいいのに。
まあ、他にも投稿側の自粛意識はかなりありそうですな。
ツッコミ的二次創作がしにくいというか。

6: hideide at 2008年02月03日 22:15

二次創作とリメイクは全く違うじゃろ……。そもそも浦沢直樹の「PLUTO」はリメイクですらない。コミケにアトムとウランの禁断の兄妹愛を描いたエロ同人誌があるか?

7: 通りすが at 2008年02月04日 00:28

手塚治虫など昔の作品はファンの手によって神聖化されすぎている。
それをその時の波を追い続ける現代の二次創作にゆだねようとしても上手く行くはずが無い。
PLUTOがビックコミックスから出ているように、漫画やアニメにも世代があり、それによっても趣向が変わっていくというのを理解し認めていかないといくらこのような企画を立案しても意味が無い。
二次創作にまで「古き良き」を押し売りするのはやめていただきたい。

8: アトム嫌いな私 at 2008年02月04日 02:41

そもそも今は手塚作品の読者が少ないかと・・・。
私は同人作家ではなく読み手ですが、別に手塚2次創作を読みたいとは思いません。
読者数少=注目度少の作品は普通2次創作の対象から外れると思います。

9: at 2008年02月04日 03:42

全然知らなかった・・・
ニコニコでプロかと思えるMAD作品観るとやってほしい
逆転裁判あたりの職人ならBJのクールなPV風MADいけると思うけど
手塚作品は手軽に触れないだろうな手塚作品自体は敷居が低いのに深いんですが

10: ブラックジャック好きな自分 at 2008年02月04日 04:36

ブラックジャック好きな自分さんもおっしゃってますが、
手軽に手を出せない手塚作品を二次創作で消化できる人はそう居ないでしょう、単純に力不足の問題で。
それこそらき☆すたやアイマス辺りなら簡単でしょうけど…

11: 20そこそこの若造 at 2008年02月04日 07:25

あれ?
手塚作品テーマの二次創作同人って、コミケで普通にありますけど…。
そこそこ有名サークルさんでも。
(まあ、エロは見たことないかも)
一過性の流行でない分、専門知識の下調べ等もしないとしっかりしたものが描けないようで、そういう意味では現在主流を占めているようなパロディ作品よりは敷居が高いかも。

12: 自分の周りしか見てない? at 2008年02月04日 10:40

絶望した!
皆PLUTOには言及してもチャンピオンに連載中のダイモンズには触れない事に絶望した!

13: HATE at 2008年02月04日 13:37

単に手塚作品はネットで二次創作をしてる人からの需要が無いってことでしょ。
作品の出来うんぬんはここで出てくる問題じゃない

14:   at 2008年02月05日 11:24

いや、手塚作品は今まで神というだけでふれられなかっただけで、需要があると思いますよ。

15: やっぱりおおかみ at 2008年02月05日 14:04

っていうか
手塚治虫の火の鳥とかブッダは
俺から見たらストーリー死ぬほどおもろい!
らきすたとか、キャラを出して「あとは好きになってくれ」みたいなののがよっぽどつまんねー!
ストーリーなし?日常?
ただのつまんねー劣化じゃねーか!

萌えれば話しなくてもいいってか?

うるせーやつらとか
萌えつつストーリーおもしろかったよ!

漫画やアニメが人を選ぶとしたら

火の鳥好きな人→あたまよさそういけてそう

らきすた好きな人→しょぼそう

だとおもう。

あと

キャラだけ出せばいいなら
頭わるくても絵だけかければ
リメイク簡単だけど

ストーリーがオモロイ物に関しては
ストーリーがいけてないといけないから
そんな頭あるやつがいないから
リメイクできないんじゃないの?

16: at 2008年02月06日 14:43

↑君の頭が相当悪いよ

17: at 2008年02月07日 14:28

メトロポリスやどろろ辺りは素材がおもしろいからやってもよさそうだな。

大人向けに連載してた、きりひと賛歌や奇子はいろんな意味で無理かw

18: at 2008年02月07日 17:19

やけっぱちのマリアをリメイクするつわものはいないのかね。

それはともかく、手塚治虫先生の作品のキャラを自由に使っていいと言われたら、たいていの人は尻込みすると思う。手塚作品の深奥を知っていれば、そうそう真似できるものでもなければ、キャラクターを活かしきることが難しいって知ってるし。スターシステムを超える漫画家は未だにいない。

19: どうせなら at 2008年02月13日 11:01

これで盛り上がることなく終わったら、どこかの偉いさんが
「今回のようにお膳立てしても利用されないのに、グレーな
 二次利用が後を絶たないのは、やはりネット界隈は
 法を守るということ自体を無視する、ならず者なのだ。
 ならず者は厳しく規制しなくてはならない」
なんて結論を出さないか心配ですね。
むしろその結論を導くため、わざとわかりにくく、ひっそり
開催していたのかな、とも思うのですが。

それは穿ち過ぎとしても、今回の件で「The Powerpuff Girls」と
「出ましたっ!パワパフガールズZ」の関係を思い出しました。
ネタ元(原作)側はリメイク(日本)にえらく意気込んでいたのに
いざやってみればちっとも盛り上がらない。というのも
そもそも原作側がもくろんだ盛り上がる要素を日本側が入れてない。

原作「こっちに逆輸入したいから、こっちでも人気の
   セラムンとかDBとかどれみとかみたいにしてね
   (大人もコーフンする燃え&萌え+ペーソスを入れてね)」
日本「おっけー(人畜無害な子供向けね)」
        ↓
日本「やってみたけど失敗であります!(こんなもんでしょ)」
原作「なんだ、がっかり(やっぱり日本では通用しないのかー)」

やはり旗振り役と現場との気持ちの疎通というのは、大切ですよね。
でないと絵に描いた餅ィ!

20: Shi MeiWo at 2008年02月28日 13:55

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