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中国の人権活動家逮捕 妻も軟禁、乳児と2カ月疲労濃く

2008年03月02日06時09分

 中国の著名な人権活動家・胡佳氏(34)が公安(警察)当局に逮捕されて2カ月。国際社会の関心が集まっている。このほど、北京市内の自宅で生後3カ月の長女・謙慈ちゃんとともに軟禁されている妻・曽金燕さん(24)にメディアとして初めて面会し、監視下の厳しい生活ぶりを聞くことができた。

 「家族以外では(胡氏の逮捕後)あなたが初めての客人です」

 新興団地の一角にある胡氏の自宅を訪ねた記者を曽さんはこう言いながら招き入れた。公安当局者らしき男性数人が付近にいたのだが、記者を住人と勘違いしたらしい。

 1月にドイツのテレビ局が謙慈ちゃんを抱く曽さんの姿を窓越しに撮影したが、当局者にカーテンを閉められた。関係筋によると、独仏両国の大使館で人権問題を担当する外交官が最近、面会を試みたが阻まれた。

 曽さんによると、昨年末の胡氏の逮捕から丸2日間、公安当局者が少なくとも6人、室内に居座って親子を監視。就寝時やトイレに行く時さえ、ドアを閉めることは許されなかった。

 「彼らは私たちの安全を確保するためと言いましたが、法的な裏付けのない拘束です」

 曽さんは天井を指さした。公安当局者は真上の部屋を拠点に24時間警戒。食料や水を差し入れる胡氏の両親以外の立ち入りも、曽さん親子の外出も許されていない。

 盗聴を警戒し、会話は筆談で進めた。「一度、娘に予防接種をするため病院に行くことができた。帰宅すると捜索された跡があった。以後、日記やメモを書くことは控えている」。謙慈ちゃんを左腕で抱えながら曽さんはペンを走らせた。

 玄関には新品同様の乳母車。謙慈ちゃんの健康状態は良好というが、夫の逮捕と育児で曽さんは疲労の色が濃い。

 胡氏の逮捕から1カ月後に北京市公安局から届いた逮捕通知には「国家政権転覆扇動罪」という容疑名だけが記され、説明はない。「弁護士が接見できたのは2月4日の1度きり」。逮捕時、胡氏の旅券、パソコン、メモ、手紙、写真などに加え、国際的に知られたブロガーである曽さんのパソコンも押収された。

 友人によると弁護士は接見時、胡氏の話し方が不自然で、せりふを読まされているような印象を受けたという。「もともと肝臓に持病を抱えている。逮捕後に体重を落とした」と曽さんは胡氏の健康状態を案じる。

 取材の数日後、曽さんは公安当局者から「外部との接触」は許されないと改めて警告された。

 こうした軟禁状態や胡氏の逮捕に対し、2月26日に訪中したライス米国務長官は懸念を表明。欧州議会も1月、釈放を求める決議を採択した。

 一方、中国外務省の劉建超報道局長は2月26日の定例会見で、胡氏の逮捕について「法律を犯したいかなる人物も法的な制裁を受けなければならない。中国は法治国家だ」と答えた。

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