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本当の優しさ

仕事の合間にCDを読み込んでいたら、懐かしいCDが目に入った。


今から1年半くらい前だったか。
飲み会の帰り、酔い覚ましに新宿から気持ちよく散歩して帰っていたら、赤信号で私の隣に立ち止まった人影が話し掛けてきた。

「中野坂上はこっちですか?」

わりと流暢な日本語を喋る外国人男性だった。
背がひょろりと高く、髪はクリクリの天然パーマで天使みたいに可愛らしい顔をした彼は、ポーランドから毎年のように数カ月来日し、あちこちで公演しているピアニストだという。
ジャズのライブに行ってきたと言う彼は、CDを手に「これからホテルの部屋に戻って聴くんだ♪」と興奮気味に話し掛けてきた。
中野新橋に住んでいた私は、もちろん中野坂上は通り道なので、深夜だから脇道にも入れず、彼と話しながら帰るはめになったのだ。

職場でもそうだったが、私は幼少の頃からネイティブに英会話を習っていたおかげで単語は忘れまくっても発音だけはいいので、外国人に話し掛けられて答えるとやたら喜ばれる傾向にある。
英語まじりに音楽の話等を楽しく喋りながら歩いていると、すっかり中野坂上を通り過ぎ、中野新橋付近まで来てしまっていた。

「あ、坂上過ぎちゃったね。じゃあ私ここで曲がるから」
そう言うと、
「待って!さっき買ってきたCD、一緒に聴かない?」

おいおい。
「あのね、ミヒャエル、日本人の女の子がさっき会ったばっかりの外人についてったら危ないんだよ〜(^^;
何されるかわかんないでしょお?(笑」
そう言うと、
「どうして?!せっかく気に入って買ったCD一緒に聴きたいだけなのに!」
「いや、でも明日も仕事あるから帰らないとなの!」
何度も説得したけれど
「じゃあ1時間でいいよ!ビールでも飲みながらCD聴くだけだよ!お願い!」
あまりにも泣きそうな顔でせがまれて可哀相になり、
「・・・じゃあ1時間だけだからね!」
と言って私は渋々ついて行った。

ビジネスホテルのロビーでビールを買い、殺風景な部屋に入ると大きなトランクとノートパソコンがぽつり。

「僕のCDもあるんだ!あげるよ(^^)」
そうしてポーランドの風景を見ながらCDを聴いていると、ふいに日本人の女の子が彼と一緒に映っている画像が目に入った。
「ヨーコって言うんだ。でも、フラれちゃって・・・」
なんでも、彼はいつでもどこでも一緒にいたい!と彼女にべったりしすぎていたらしい。
「なんで日本人の女の子はそうなの??好きなのになんで一緒にいないの???わからない!」
うなだれる彼に、女心というものや私の恋愛観についてゆっくりと語った。

「好きだから、その人が自分と会う時以外の時間も大切なんだよ」とか
「会ってない時にも気持ちが繋がってるって感じられるのが信頼関係なんだよ」とか
「その好きな人が大切にしてるものやことも同じように大切に思えるのが愛情だよ」とか
とかなんとか。

すると、ミヒャエルは子どもみたいな目で私を見て言った。
「カズヨはすっごく女性的な女性。すごく優しい。すごく素敵。」
そう言うと彼は突然私にキスをした。
「ちょっとミヒャエル!私はヨーコちゃんじゃないんだよ!寂しいのはわかるけど私を代わりにしないで!」
彼を突き放そうとしたけれど、細っこくてもやはり男、放してくれない。
「違うよ!カズヨがとっても素敵だから、会ったばかりだけど好きになっちゃったんだよ!」

まあそれでも必死に抵抗して、説得して、やっと放してくれたのだが、
「じゃあもう少しだけ一緒にいて」
泣きべそかかれて放置するわけにもいかず、仕方なく少しだけそばにいてあげたのだった。

無事に帰って来られたから良かったものの、冗談じゃなく危ない話である。


しかしながら、もらったCDはなかなか良く、お父様とお兄様との合作なのだが、特にお父様とミヒャエルの演奏が素敵なのです。
特にミヒャエルは、ショパンやリストの他に、ヘンリー・マンシーニやエンニオ・モリコーネをメドレーで弾いたりして、私のツボをついてくれている。



私は昔から、甘えられたり頼られたりすると「私が何とかしてあげなくっちゃ!」と思ってしまうタチで、弟が甘ったれたお願いをしてきても「ったくもー!」と言いつつやってあげてしまう。
でもそういうの、ダメなんだな、ほんとは。


制作に追われて、夜中にふと彼に電話をしたら出なくて、その後すぐにメールが届いた。
あの2連チャンで徹夜の夜だ。

「創作に男は要らない。
集中あるのみ。
・・・(ここは恥ずかしくて言えない)
愛してる。」


私はこの時、出会ってそれまでで一番彼を好きだと思った。
「惚れた」って、こういう気持ちなのかもしれないな。
生まれて初めての感覚。



なんだ、ノロケかい。

ええ、ノロケですとも。

まあたまには。ね。


posted by: foggie | - | 00:50 | comments(6) | - |
コメント
 
2006/02/24 11:03 AM
Posted by: ゆうちゃんママ
すごい話〜、なんだかドラマみたいな出会いだね!今ミヒャエルはどうしてるんだろうねえ…
最近私も結構ジャズとか興味あるんだけどさっぱりわかんないしまたおすすめとかあったら教えてね!ってか今日のはのろけ過ぎでしょ!!
私も英会話ならってたはずだけどさっぱりだめだ、和姉みたいに少しでも話せるようになりたいな☆
2006/02/24 4:55 PM
Posted by: foggie
ほんとに〜
あまり現実味がない話だけど、CDが手元に残ってるからほんとの話だよねえ(^^;
ミヒャエル、いい恋愛してるといいけど〜
ネットで名前を検索したら試聴だとか、いっぱい関連記事出てくるよ!
ジャズは深いからねー
まずはこてこてのよりもジャジーな雰囲気のとかがいいかもね。
ジャズボッサみたいな。ボサノバ聴きやすいし。
こってりジャズは、秋の夜長に似合う感じだから(笑
夜、間接照明だけで、お酒でも飲みながらね。
2006/02/24 4:58 PM
Posted by: foggie
あ、英会話なんて、外大行ってたって、数カ月喋らなきゃ元に戻るんだから、やっぱ語学は続けないと意味ないよほんと・・・
まずは、英語の絵本買ってゆうちゃんに読み聞かせてあげるとこからで!(笑
2006/02/24 9:24 PM
Posted by: うっちぃ
うぅ〜ん
ドラマですなぁ

外国のお友達は結構いますが、ブラジル・旧ソビエト・韓国・・・・
皆の共通してるのは〜
・必死に覚えたての日本語で話してくれるってこと。
・男性であるってこと
・みんなお金持ちってこと

外国のお相手とぉ〜〜ナァンテ、ロマンチックな事は僕ニャ似合いそうもないですわ

『惚れた』って感覚起きた事ないなぁ
うらやましいっすよ
もちろん『惚れられた』ってこともないんですがね( ノД`)シクシク…
2006/02/25 12:43 AM
Posted by: foggie
いや〜ドラマですよ・・・
まさかそんな展開になるとは。

確かに、日本に来れる人ってお金持ちですよね、特にアジアの方はそう。
家族連れだったりすると、いかにもお金持ちの子ども〜って感じで英語もぺラペラですしね。

私も「惚れた」なんて感覚は初めてですよ。
好きーとか、単純なものじゃなくて、何かが走る感じというか(稲妻とかは言いませんよ、間違っても(笑
いやいや、「惚れられた」かどうかなんて、自覚できるもんじゃないじゃないですか(^^;
それは相手が感じることですからー
どこか自分の知らないとこで惚れられてたりするんですよ、きっと。

・・・てゆーかですね、今思い出しましたけど、すっかりバトゥ〜ンのこと忘れてました・・・すみません・・・
2006/02/25 2:16 AM
Posted by: うっちぃ
バトゥ〜ンやってくださいませ

お忙しいようですので、
睡眠不足で
フラフラで
素直な時にでも(笑)

期待してます♪