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当時16歳の元少年に「再審無罪」 地裁所長襲撃 大阪

2008年02月28日21時17分

 大阪市住吉区で04年2月、当時の大阪地裁所長(65)が重傷を負った強盗致傷事件で、中等少年院送致とされて1年7カ月間収容された当時16歳の元少年(20)が、刑事裁判の「再審請求」にあたる処分取り消しの申し立てをしていた少年審判が28日、大阪家裁であった。大西良孝裁判長は「再審無罪」にあたる決定をし、04年7月に同家裁が出した少年院送致の保護処分を取り消した。取り調べに誘導があったと認定し、「関与を認めた供述調書などの信用性には疑問があるといわざるを得ない」とした。

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逮捕・補導された5人のその後

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保護処分取り消しをうけ記者会見した元少年=28日午後、大阪市北区で

 大西裁判長は決定文を読み上げた後、「裁判所としては、4年以上続いた事件の手続きから、元少年を早く解放してあげたい」と異例の言及をした。検察側は「控訴」にあたる抗告受理申し立てを大阪高裁にする方向で協議するとみられる。

 事件では、当時13〜29歳の5人が強盗致傷容疑で逮捕・補導された。だが成人2人が06年3月の大阪地裁判決で無罪とされ、元少年の弟で当時14歳の少年(18)も昨年12月の差し戻し後の家裁での少年審判で「無罪」にあたる不処分の決定を受けた。これで、刑事責任を問われない当時13歳の少年(18)を除く4人全員が「無罪」となった。

 大西裁判長は決定で、元少年が犯行を認めたとされる「自白調書」は「共犯者が誰かという重要な点を含め変遷が多い」と指摘。大阪府警の取調官に胸ぐらをつかまれるなどして自白を迫られ、取調官の言う通りに共犯の名前や犯行状況を供述したとする元少年の主張を踏まえ、取り調べには「誘導、示唆、暗示があったと強くうかがわれる」と認定した。

 そのうえで、犯行グループの後ろ姿をとらえたとされる現場付近の防犯ビデオの映像からは元少年らを特定できないと判断し、「非行事実の証明がない」と結論づけた。

 元少年が03年、知人少年から10万円を脅し取ろうとしたとする恐喝未遂の非行事実は認めた。

 元少年は捜査段階で「5人でオヤジ狩りをした」と供述し、当初の少年審判でも関与を認めた。04年7月、家裁で少年院送致の決定を受けたが、収容当日から「取調官が怖くてうそを言った」などと否認に転じていた。

    ◇

 〈大阪地裁所長襲撃事件〉 04年2月16日午後8時半ごろ、大阪市住吉区帝塚山西1丁目の路上で、帰宅途中の大阪地裁所長(当時)が若者グループに襲われて腰の骨が折れる重傷を負い、現金約6万3000円を奪われた。

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