ついこの前、某メーカーの方に聞かれました。
「木谷社長って、『ええっ？！そこまで話すの？！』と驚くほどノウハウや展望をお話しされますよね。あれは、どこまで本当なんでしょうか？！」
同業者として信じられない、というのももっともです。普通、ノウハウはタダでは教えられません。
自分の経験、成功、失敗、収集した情報、分析等から導き出した財産。ところが木谷社長はあちこちで、
「これこれこういう理由だから、今後こうなると考えられる。だからこうすべきだ」
という話をべらべら喋る。勿体無い、信じられない、何か騙されているのでは？と考えるのも、社会人としては当たり前。特に同業者なら。
「多分、基本的に本当だと思いますよ。聞いていても違和感が無いでしょう？」
「ええ。私もそうとしか思えなかったんです」
「なら、本当のことなんでしょう」
「解らないのは、なぜそれをお話になるか、です」
「おそらく木谷社長は、カードゲーム業界が本当に大きくなるためには、自分の会社だけが成功すれば良いわけではないとお考えなんでしょう。
『１人の勝ち組』で安定成長する業界ではない、各社が儲けて、もっともっとカードゲームを本気で育てようとするメーカー、ショップが増えて欲しいと考えているんだと思いますね。
僕だって、今、ブロッコリーさんやブシロードさんとお話させて頂いているのは、
『ブロッコリーさんがお話を聞いて下さるからお答えしている』
のであって、相手がコナミさんでもバンダイさんでもタカラトミーさんでも、カードゲーム業界に役立つ為なら、どこでも何でもご協力しますよ。
そういう意味で、木谷社長は同志ですから、社長がご自分のノウハウ等について皆さんにお話されるのは、ごく当然のように思います。」
ご質問された方は、とても納得された表情をしておられました。
多分、もともとご自分でも、「そうではないかな？」と予測しておられたから、なのでしょう。
さて、インタビューの続きです。
■木谷社長に突撃インタビュー！！後編
池田
「僕は常日頃、
『カードゲームとは投資のゲームである』
と発言しています。
これを買うと、どれだけの期間、どれだけの濃度で楽しめるか？それが購入を決める大切なファクターとなると。
で、ヴァイス・ショヴァルツ。始まったばかりのタイトルに対して言うのも気が早いのですが・・・いや、むしろこれから始まるからこそ聞きたいのですが。
ズバリ、ヴァイスは、投資するに相応しい、長く遊べるタイトルになるのでしょうか？！」
木谷社長
「まず、初年度で８タイトルをリリースします。（すなわち、最低でも８つのカードセット）
現在発表していない残り３タイトルについては、夏ごろか、遅くとも秋には追加して発表していきたいと考えています。
そして、毎年年末には、次年度の新規タイトルを４タイトルぐらいずつ追加して発表していこうと予定しています」
池田
「なるほど！そういえばヴァイスは、“汎用カードゲーム”なんでしたね。エキスパンションごと、と言うよりタイトルごとに新しいゲームとして広がっていくような・・・これは“終り”が見えませんね」
木谷社長
「これからもどんどん、『ええっ！アレが入るのか？！』と驚いて頂けるようなビッグタイトルや、意外なタイトルが入ってきますよ。
むしろ皆さんにも、どういったタイトルを入れて欲しいか、広く意見を募りたいですね」
池田
「“プロジェクトレヴォリューション”も、３年まえなら『実現できるはずが無い』と一蹴されるような夢の企画でしたね。でも実現できた。
僕も個人的に、木谷社長なら信じられないようなタイトルを引っ張って来てくれるだろうと、いつも楽しみにしてますよ」
木谷社長
「何でもかんでも権利が取れる訳じゃないんで難しいんですけど、今まで色々やってきましたからね」
○カードゲーム業界成長論？！
池田
「すこしヴァイスから離れた質問です。
社長は最近のカンファレンス（説明会）やデジタルハリウッドの公演等で、
『カードゲーム業界はこれからどんどん成長する』
と仰っていますが、そうした『業界成長論』について、最近も変わってはいませんか？」
木谷社長
「ますますカンカンの強気ですね！今年に入ってより強く感じています。
むしろ（現場にいる）池田さんの方が、直接肌で感じていませんか？」
池田
「僕は、子供達やユーザー皆さんの、日々楽しんでいる姿を見て、カードゲームの未来を強く信じていますが、僕達ユーザーやショップとは全く違う視点の、企業として、純粋に“起業人木谷高明”として、カードゲームが投資の対象となるという、根拠をお聞きしたいんです」
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木谷高明氏は元々証券会社に勤めていたビジネスマン。�螢屮蹈奪灰蝓爾鯲�ち上げてたった７年で上場させた“起業人”。
誰もができる事ではないのは言うまでも無い。
そうした、卓越したビジネスセンスを持つ人間が、独立して
「よりによってカードゲームの専門会社を作った」
と言うのは、ビジネスの世界では特殊な、注目に値する事だと考えていい。
わかりやすく言うと、まだまだカードゲームが、
「将来に向けて投資すべき産業」
と考えられていない今の日本で、大きく成功したことのある人間がカードゲームの会社を作ったという事は、ホビー業界、コンテンツ産業の人間、投資家達が、
「すなわち、カードゲーム業界に勝算があると考えられるのか」
と注目するきっかけになりうるのだ。
さて、「好きだから」「面白いから」「何となく」ではなく（無論木谷氏はカードゲームそのものもお好きだが）、
「この事業に勝算あり！」
と考えてカードゲームの会社を作った木谷社長、その根拠を聞いてみよう！！
（本当は多分、ここに書いている事以上に色々あると思います。ごく一部と考えて御読み下さい。）
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木谷社長
「根拠ですか・・・
ちょっと回り道しますが、いいですか？
まず、売る側作る側、買う人達全部まとめて、カードゲーム業界を構成するセクター、というか要素としてまとめてみましょう。
１・パブリッシャー
発売しているメーカー。ブロッコリー、バンダイ、タカラトミーやコナミ等。
２・ディベロッパー
遊宝洞さん等の、「ゲームの中身を作っている所」（開発会社）
３・ショップ
カードショップからコンビニまで、販売しているところ。
４・ユーザー
カードゲームをプレイしている人達。お客。
５・メディア
雑誌、テレビ新聞等、カードゲームの告知に関わる人達。
大まかに言って、この五つのセクターに分けられますよね」
池田
「なるほど」
木谷社長
「これは、どういったコンテンツ事業でも、基本は同じです。
しかしカードゲームは特別に、この中でも特にユーザーとショップの影響が大きい。
なぜなら、カードゲームは口コミ等のコミュニティで広まる面が、他のものと比べて極端に大きいので、ユーザーとショップがメディアを請け負っている面があるからです」
池田
「ユーザーがメディア、それは口コミだけでなくネットブログ等もそうですね？」
木谷社長
「そうです。従来の商品だと、広告やテレビＣМの告知力で力押しで売るのが基本でした。
よって、
「これだけ広告にお金を使えば、これだけ売れる」
という予測がある程度できた。
しかし、従来の“広告の力”そのものが低下してきている今、色々な商品が『売り込み』に苦しんでいます」
池田
「アメリカのマーケティング論の本でも読みましたが、テレビＣＭや雑誌広告の販促効果は、年々落ちているそうですね」
木谷社長
「その点カードゲームは、広告も重要ですが、何より１人ではできないので、始めた人が次々に仲間を増やしてくれます。
特にその内容が良ければ、良いゲームであればより熱心に広めてくれる。“良い商品”がキチンと報われる。
そうした、『口コミの力』が特に大きく響いてくるのがカードゲーム。その効果は、カードゲームが一般の趣味に近付くに連れ、どんどん大きくなっています。
さっき発言した、『ユーザーの力が特に大きい』という言葉は、そういう意味ですね」
池田
「市場として弱くなった『販促媒体としてのメディアの力』を補足する生命力が、カードゲームというコンテンツには元々備わっている、という事ですね。
もしかするとこれからのメーカーの仕事は、今まで広告宣伝費に使っていた分の一部を、その“生命力に肥料を与える”ところに割り振るべきなのかも知れませんね。
すなわちルールサポート、イベント等のインフラ面に」
木谷社長
「また、この業界では“ユーザー”は、“作り手”とも絡んでいます。
ユーザーと専門店との結びつきが非常にウェットなため、ユーザーの意見がショップに非常に濃密に吸収され（テレビゲームショップ店員と毎日テレビゲームの話を話をする人はあまり居ないがカードゲームは毎日）、そうした意見がショップを通じてメーカー、そしてゲームデザイナーに伝わりやすい」
池田
「それは、そういうスキームを作っている会社は上手くノウハウを蓄積できているでしょうね」
木谷社長
「そう。そうした流れをキチンと作っていると、ユーザーの考えがディベロッパーにも伝わります。
ここまでくると、カードゲームのユーザーって、『単なる消費者』ではなく、この業界そのものを作っている中核だと言えると思うんですよ」
池田
「全くそうですよね」
木谷社長
「ユーザー層は低年齢層にまで広まっていますし、生まれた時からカードゲームが存在した、『カードゲーム世代』がこれからどんどん市場の中心になってきます。
パブリッシャーもこれから、需要を見てどんどん商品開発を増やしていくと思います。
売れればショップも増えていくでしょう。池田さんの所も（店が）増えていくでしょ？」
池田
「ええ。しかも地域密着型のカードキングダムですから、中心市街ばかりじゃなく、その辺の街角にポコポコ作っていきますよ。
僕自身、
『人口集積地でなければ商売が出来ない』
という商売では、未来が無いと思っていますから。練馬春日のような『普通の街』（練馬は“ドラえもん”の舞台。『普通の街』の代表！）で黒字経営になって、初めて『どこででも出来る商売』と言えるし、カードゲームが一般化したと言えると考えています」
木谷社長
「理想は日本中、どこの町にもカードショップがある状態。それはおそらく、可能なんですよ。
そうして需要が高まっていくと思われるカードゲームなんですが、もっともネックになるのがディベロッパーだと思います。
今の所、遊宝洞の“中村聡”以外には、あまりにも作り手の顔が見えていない」
池田
「ああ、それはいつも思います。毎回新しいカードゲームが出るたび、『どこが作っているんだろう？』と言うのが気になって気になって！
アレやコレを作った人の新作なら、キャラクターに興味が無くてもとりあえずやってみたい、とか」
木谷社長
「デザイナーの名前をもっと出して行く。もっともっと作り手の顔を出していくこと、ブランドを作り上げていく事が、この業界そのものの、安心感を作っていく事に繋がると思いますね。
そこで当社は、優秀なディベロッパーとの結びつきを深めていきたいと考えています。
アニメで言えばアニメスタジオ、ゲームで言えば開発会社。有名なところがいくつかあると思うのですが、カードゲームでもそうした所が欲しい。
うちはそうした面も含めて、人とノウハウを広めていきたいと考えています。
また、ディペッパーが有名になることによって、カード製作に興味ある人材が業界を目指しやすくなる。もっとディベロッパーを目指す人が出てきて良いと思います。
まだまだ、カードゲームを製作する専門知識を持っている人が、少ないのが現状ですからね。
パブリッシャーに就職して企画を立ち上げる事も“カードゲームを作る事”ですが、カードゲーム部門に配属されるとは限りませんしね。当社は今の所１００％カードゲーム部門ですが（笑）」
池田
「中村さんにも“名前の知られているライバル”がもっと欲しいですもんね（笑）」
木谷社長
「まとめますが、カードゲーム業界ならではの強みがはっきり見えている事と、
『更にこうすれば大きくなるのでは？』
という所が沢山、具体的に見えているので、まだまだ大きくなる、大きく出来る、と考えているんですよ」
○誰もが楽しめるエンターティメントとしてのゲーム
池田
「最後に。
今後大きくなるであろうカードゲーム業界において、ヴァイスをどういったタイトルとして育てていきたいとお考えですか？」
木谷社長
「今回、ヴァイス・ジュヴァルツというゲームは、『勝っても負けても楽しい物』にしたいと思ってます。ですから今回は、遊戯王やマージャンの楽しさに近い物を目指しました」
池田
「僕はＤ０やＤＭが大好きなんですが、緻密に戦術を組み立てて遊ぶゲームであるこれらのゲームだけでなく、引きの流れに身を任せて、楽しむゲームも大好きです」
木谷社長
「どちらかと言うとそちらですね。
まあ、何といっても中村さんが作っているので、『何も考えないゲーム』には間違ってもなっていませんが（笑）」
池田
「Ｄ０がいわば緻密なプレイングのカードゲームの“極北”であれば、ヴァイスは、
『運の要素が強い中で、プレイングでがんばってコントロールしつつカオスを楽しむ、エンターティメント性の高いゲーム』
という事ですか？」
木谷社長
「そうですね。Ｄ０が総合格闘技であれば、ヴァイスはノアですね（笑）。
カウント2.5で返し合うような。イベントでもその特性をいかした楽しい大会を企画していきたいですね」
池田
「そっちの方がむしろ世俗的というか・・・一般向けなんでしょうね」
木谷社長
「そういう事で、かなり間口を広く取ったゲームなので、あらゆる年齢層、プラス女性層の多いゲームとして広まって欲しいと考えています。
例えばマージャンって、正確に点計算ができなくてもみんなプレイしますよね？
また、酔っ払ってマトモにゲームが出来ないような状態でも。
それはみんな、たとえ酔ってても
『何となくマージャンだったら勝てるんじゃね？』
と気軽に考える事が出来るからだと思うんです。
ヴァイスには、そのぐらい裾野が広がって欲しい。
ルールにきっちり嵌らなくてもいい。うろ覚えで遊べるものであって欲しい」
池田
「遊戯王も最初、まさにそうでしたね。友達同士単位で全然ルールが違ったり。むしろその方が広まりやすかったのかも知れません。
しかし、そこまで一般化するには、もしかすると“キャラクター”が逆に邪魔になる事があるかもしれませんね」
木谷社長
「“一般化”の際に、タイトルが無い方がむしろ良くなるタイミングがあれば、将来的にはヴァイスでのオリジナルタイトルも考えられるでしょう」
池田
「なるほど、ある程度広まったあと、ヴァイス発のタイトルを立ち上げて、そこからさらに一般向けに大きく勝負ですか！なるほどなぁ！」
木谷社長
「とりあえず２、３年後には、
『日本のカードゲームとしてメジャーなのは、遊戯王、ＤＭ、ヴァイスだよね』
と言われるようになれば良いなと考えています」
池田
「カードショップとしても、遊戯やＤＭぐらい売れる商品がもっともっと増えて欲しい所ですからね。期待しています。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました！」
２００８年２月１６日 �螢屮轡蹇璽票卞發砲董�
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