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当直医の苦闘・悲しみ・誇り… カメラを通して見た


 救急医療が各地でがけっぷちに追い込まれている。激務やストレス、患者とのトラブルに疲れ果て、病院を去る医師が後を絶たない。医療費抑制や病院の経営難も体制縮小に追い打ちをかける。救急車の中で受け入れ先が見つからない「救急難民」が増えるなか、市民の命を守ることに誇りを持ち続ける人たちがいる。

写真2:05 救命救急センターに心肺停止で運び込まれた高齢の女性が亡くなった。遺体を引き取った家族の車を、医師や看護師が玄関で見送った。家族から「お世話になりました」と声をかけられた医師は「この瞬間、いつもつらいです」と、ぽつりと言った=神戸市立医療センター中央市民病院で
写真4:05 カルテ作りや入院患者の対応が一段落し、向かい合わせたいすで仮眠をとる岡田健志医師(25)。30分後に起きだし、気がかりな患者の病室へ向かった=大阪市住吉区の府立急性期・総合医療センター・救命救急センターで
写真7:10 意識不明になった女性を搬送する枚方寝屋川消防組合の松浦直樹救急隊長(47)。救急車から携帯電話で受け入れ先の病院を探し続けた。途中、患者に呼びかけたが応答がない。「(受け入れを)OKしてくれ……」と、祈るようにつぶやいた=大阪府寝屋川市で
写真7:43 交通事故で負傷した男性が運び込まれた。出血が続く中、処置を行った鈴木啓之医師(27)は、内臓に損傷がないか超音波診断装置のモニターを凝視した=神戸市中央区の市立医療センター中央市民病院・救命救急センターで
写真8:20 当直だった畑倫明医師(45=右)の勤務時間が終わる寸前、交通事故で頭部を強打した女性が運び込まれた。救急隊員が首を支え畑医師が気管挿管した=奈良県橿原市の県立医科大学付属病院・高度救命救急センターで

 途方に暮れる患者や家族の前で、救急隊員が何度も電話をかける。搬送先が決まらないまま、心臓マッサージなどの救命処置が懸命に続けられる。そんな光景が日常になった。

 生命の危機に陥った患者に対応する救命救急センターにも休息の時はない。脳疾患や心臓発作の患者に加え、交通事故、自殺企図、重病患者の急変……。そこへ、本来は一般の救急病院が受け入れる患者たちが次々と押し寄せる。

 患者の容体を確かめ、検査、点滴から画像診断、緊急手術へ。当直医から次々に指示が飛ぶ。集中力とスピード、スタッフの総合力が要求される現場で、ささいなミスも許されない。張りつめた緊張感が夜通し続く。

(写真・日吉健吾、青山芳久、文・龍沢正之)

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