血液製剤フィブリノゲンの投与でC型肝炎を発症した418人の症例リストが厚生労働省内に放置されていた問題に関連し、田辺三菱製薬(旧ミドリ十字)がリスト以外にも、血液製剤を投与された人を特定できる資料を保有していたことが20日分かった。

 リストの418人は急性症状があった人だけだが、今回資料が見つかった人は急性症状がなかった。薬害肝炎訴訟の原告・弁護団は「製薬会社が隠している資料が相当数あるはずだ。製薬会社はリスト問題発覚後も対応を放置しており『二重の放置』だ」と批判している。

 同社は資料に記された情報を約20年前から把握していたとみられ、今月中旬、投与した病院を通じて熊本県在住の2人に告知した。

 資料には1987年に熊本の病院で投与された女性2人のイニシャルや年齢、病院名などが記されている。2人とも急性症状はなかったが、その後、慢性肝炎になり九州訴訟原告に加わった。

 この資料は「マル秘」扱いとされ、社内の関係部署への報告方法、調査を担当した支店名の記入欄などがあり、各地で調査を実施した可能性を示す記載もある。

 田辺三菱製薬はどんな情報を、どのくらい把握しているのかは「お話しできない」としている。

 418人分の症例リストは2002年、厚労省が報告命令を出し、田辺三菱製薬がフィブリノゲン投与後に急性症状を発症した例を提出した。今回の資料について、厚労省は「リスト以外の情報は把握していない」としている。

 九州訴訟弁護団事務局長の古賀克重弁護士は「もっと早く告知があれば2人は症状が進む前に適切な治療も受けられたはずだ。対応がすべて後手後手で製薬会社としての体をなしていない」と述べた。

 C型肝炎ウイルスは感染しても急性症状がない人も多く、20年ほどたった後に慢性肝炎や肝硬変になる可能性もあるとされる。

=2008/02/21付 西日本新聞朝刊=