ワシントン(CNN) 米国防総省は20日、制御不可能となり、地球に落下、衝突する恐れがあった米軍事用スパイ衛星を同日の東部時間午後10時半(日本時間21日午後12時半)ごろ、海上配備型迎撃ミサイルSM3で約247キロ上空で撃墜したと発表した。
ハワイ西方の太平洋上でイージス艦「レイクエリー」からミサイルを同10時26分ごろ発射、衛星が大気圏に突入寸前の軌道で撃墜に成功したとしている。発射は1発だった。ミサイル防衛システムを用いた衛星破壊は初めて。撃墜費用は最大6000万ドル(約65億円)。
米国防総省は地球に向かっていたスペースシャトル「アトランティス」に衛星の破片が激突しないよう、フロリダ州のケネディ宇宙センターにシャトルが着陸した後に迎撃ミサイルを発射した。
破壊した偵察衛星の重量は約2.3トンで、毒性が強く発がん性も指摘されるヒドラジンを搭載。米国防総省は、衛星落下で有毒ガスが人口密集地域に拡散する恐れが出たことから撃墜に踏み切ったと説明していた。
ミサイルがヒドラジンが積まれる燃料タンクを直撃したのかは不明。タンクに命中したのかの精査には24時間掛かるとしているが、国防総省高官はタンクを明らかに破壊したと述べた。
破壊によって生まれた衛星のゴミはほとんどが大気圏突入で燃え尽きると分析、周回する他の衛星などに悪影響はほとんどないとの見方を示した。
このスパイ衛星は2006年末に打ち上げられた直後、交信不能となった。撃墜しない場合、3月初旬に地球に落下する見通しだった。
一方、昨年1月に弾道ミサイルを使った衛星破壊実験を実施した中国の国営・新華社通信は、米国によるミサイル撃墜について「懸念している」と伝えた。米国は昨年、中国の実験を強く非難していた。
ミサイルによる破壊を受け、中国外務省報道官は米国が国際社会に必要な情報を迅速に提供することを求めると指摘。また、米国の今回の行動で宇宙で予想される被害を綿密に警戒しているとも語った。中国は昨年1月の衛星破壊実験で関連情報を国際社会に流さず、批判を受けている。