千葉・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が衝突した午前4時7分の12分前に清徳丸の灯火を目視で確認していたとみられることが20日、防衛省の調べで分かった。あたごが操舵(そうだ)を手動に切り替え、後進で回避行動をしたのはその11分後だった。また、午前4時前後に艦橋の当直10人が順次交代しており、引き継ぎなどで見張りが手薄になっていた可能性が新たに浮上した。
横須賀海上保安部などは、最初に見張り員が確認した後の両船の位置関係や航行状況、当直交代の引き継ぎの実態などを調べている。
防衛省によると、19日午前3時55分ごろ、あたごの見張り員が清徳丸の灯火を視認したとみられる。灯火が動いているのを目視で確認したという。マストの白い灯火と、右から左に航行していることを示す左舷の赤い灯火だったとみられる。
清徳丸が僚船並みの14ノット(時速約25.9キロ)、あたごが10ノット(同18.5キロ)で航行していたとすれば、両船は約8・9キロ離れていたことになり、すぐに対処していれば事故は回避できたと考えられる。
しかし、この見張り員はその後、清徳丸からいったん目を離したとみられ、同4時5分ごろ、右方向に清徳丸の緑の灯火を視認したが、船の灯火かどうかは判断できなかったという。同6分ごろ、灯火がスピードを上げて動いたため船と確認した。あたごは手動操舵に切り替えたうえ、全力後進をかけて回避行動をしたが、同7分に衝突した。
防衛省は19日、衝突2分前に初めて灯火に気付いたと説明、それ以前の漁船の確認について言及はなかった。
20日に記者会見した海上幕僚監部の河野克俊防衛部長は「(一般論で最初に視認した時の距離に)そういう目標が出ていたとすれば、手動(操舵)にするのが普通じゃないかと私個人は思う」と述べた。【本多健、加藤隆寛】
▽航行安全に詳しい日本財団の山田吉彦・広報チームリーダーの話 12分前に灯火を視認後、レーダーや目視で船の動きを継続監視しなかったのか。レーダーが漁船を1隻もとらえていないとは考えられず、衝突直前まで漁船の群れに気付かなかったはずはない。実際に灯火を確認したにもかかわらず、漫然と自動操舵を続けることは信じがたい。
毎日新聞 2008年2月20日 21時21分 (最終更新時間 2月21日 8時18分)