昨日早朝、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突し、清徳丸に乗っていた親子が行方不明になってしまいました。現在でも二人は見つかっていません。まだ捜索は続いているようです。生きていらっしゃることを祈ります。
こうした事件・事故が起きると私を含めて反戦・平和の気持ちを持っている人やマスコミは、「自衛隊が悪い」「イージス艦が悪い」と言いたくなりがちです。
とりあえずは予断を避け、正確な情報に基づいた判断をすることが大切ですね。
さまざまな報道などをチェックしてみました。
「あたご」は海上自衛隊のイージス艦で、それまでの「こんごう型」よりもひとまわり大きい艦艇です。
(三菱重工 長崎造船所で作られていた「あたご」 2005年撮影)
イージス艦は探知能力と情報処理能力が優れていると言われていて、敵対する国が撃ってきたミサイルを捜して追尾する能力を持っています。
(「こんごう」は海の上から迎撃ミサイルを撃ってミサイルを落とす装備を備えていますが、「あたご」は捜索・追尾のみで迎撃する装備は持っていません。)
今回の事件が起きた後の記者会見では「最新鋭の探知能力を持つイージス艦なのになぜ?」というような質問が相次いだそうです。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080219/dst0802191040010-n1.htm
↓ここから引用
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「事故を起こしたのが最新鋭のイージス艦だったことについてどう考えるか」との質問が相次いだ。防衛省幹部らは「最新鋭であるかそうでないかは関係ない。今は漁船乗組員の方々の捜索に全力を挙げる」と述べるにとどまり、事故原因についても「調査中」を繰り返した。
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↑引用ここまで
たしかに軍事的には最新鋭であっても、海面にいる漁船は見つけにくいようです。
「最新鋭のレーダーでも見つけにくい」 「世界の艦船」編集長 木津徹
http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080219/dst0802191042011-n1.htm
以下の画像で下の部分にある八角形の部分が最新鋭のフェイズド・アレイ・レーダー(SPY1)です。
対水上レーダーと航海レーダーは、丸で囲んでいる部分です。
昨日、NHKの「NEWS 7」での解説を要約すると、
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八角形の部分は防空用
基本的に空を飛ぶ目標物の探知に使われるもので作戦や訓練の時に使う
一般の航行時には使わない
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海上の船などをチェックするのは、艦橋に取り付けられた水上レーダー
相手が小型の漁船の場合、数10キロ以内のものが探知でき、操舵室と戦闘指揮所にあるレーダー画面でそれぞれ一人の隊員が監視
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さらに通常の監視体制では艦橋の左右、そして後方の甲板に3人の隊員が配置されている
艦橋の中にも2人、あわせて5人が24時間体制で周囲の見張りを行なっている。
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とのことでした。
石破大臣は昨日、自民党の部会で説明をしたそうです。
それによると、
事故が起きた2分前に、衝突したのとは別の漁船がイージス艦の前を横切り、その際に緑の明かりを確認した
↓
1分後に緑の明かりがスピードを上げたので漁船だと確認した
↓
その時点で「あたご」は全力で後ろに下がろうという行動をとった。100メートル前方の漁船も大きく右側に舵を切ったが午前4時7分に衝突した。
とされています。
↓ここから引用
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(「海上衝突予防法」では)2隻の船が進路を交差して横切る場合、相手を右舷側に見る船が右に進路を転じて衝突を避け、一方の船は進路、速力を保ったまま航行することを定めている。
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↑引用ここまで
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008022002088988.html
今回、イージス艦「あたご」は「全力で後ろに下がろうという行動をとった」そうですが、右に舵をきっていなかったとすると、回避の仕方に問題があったのかもしれません。
以下のような報道もあります。
イージス艦、停止間に合わぬ速度 分速300メートル
http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200802200120.html
「あたご」のような大きさの船は、止まったり後ろに下がったりするのには時間がかかります。
「あたご」の前を横切ろうとした漁船のスピードや航路、付けていたランプ等が適切だったのかどうかについては、まだはっきりとはわかりません。
今回の事故の原因がどこにあるのかは、まだわかっていませんので予断は避けるべきですが、自衛隊の側の責任は免れそうにありません。
また、事故が起きたという情報が石破大臣や福田首相に伝わったのが遅すぎたという点も問題になっています。
2008年02月20日
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