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【産経抄】2月20日
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薬師寺の名物管長だった高田好胤さんが、説法などでよく口にした言葉に「百里の道は九十九里を以(もっ)て半ばとす」がある。原典は中国の古典「戦国策」にある「百里を行く者は九十を半ばとす」だそうだが、頭ではわかっていても実践に移すのは凡人にはなかなか難しい。
▼きのう未明、東京湾に入る手前の千葉県沖で海上自衛隊のイージス艦と漁船が衝突、漁師父子が海に投げ出された。イージス艦は、昨年10月に母港の舞鶴を出航、ハワイ沖で訓練を重ね、ほぼ4カ月ぶりに日本の港に戻る直前での事故だった。
▼外洋で長い訓練を重ねてきたつわものたちに一瞬の気のゆるみが生じてしまったのだろうか。原因究明は今後の調査に待たねばならないが、既に世間の風は自衛隊に厳しく吹きつけている。まさに最後の「一里」での痛恨事だ。
▼悪いときには悪いことが重なるもので、在沖縄の米海兵隊員が続けざまに不祥事を起こしている。女子中学生暴行事件が起こった後に海兵隊員による酒酔い運転、民家への無断侵入、二十ドル札偽造と出るわ、出るわ。気のゆるみというレベルを超え、再発防止のかけ声が空しく響く。
▼これらのニュースをNHKが連日トップで扱い、基地反対派を活気づかせているのも釈然としない。もちろん、許されざる事件ばかりだが、扱いが大きすぎやしないか。受信料をいやいや払っている身にすれば、ほかのニュースはどうした、といいたくもなるが、根本は不祥事をなくすしかない。
▼鉄壁に見える日米同盟も国民の支持をなくせば、たちまち砂上の楼閣となる。イージス艦の事故と米海兵隊員の不祥事は、同盟のアリの一穴となりかねない。防衛省と米軍には兵士一人一人に綱紀粛正を徹底させる義務がある。