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作品No.【276】
詐欺師
久しぶりに高校時代の同窓会に出席した。高校卒業から二十五年、みんな立派なおじさん、おばさんになっている。昔、仲がよかったオキタが近づいてきて話しかけてきた。
「おい、知ってるか? ササキの奴、金持ちになったらしいぞ」
「本当か? でも、あいつ一体何をやってるんだ?」
「それが、大きな声では言えないが、……詐欺師らしいぞ」
「詐欺師! まあ昔から嘘をつくのは上手かったからな」
「ああ、詐欺師の世界の中でも有名らしいぞ。天才詐欺師だって」
「分かるような気もするな。あそこまで嘘が上手い奴って他にはいないものな。まさに天職ってやつだな」
その噂のササキが近づいてくるのを見つけた。すかさず、話しかける。
「おい! ササキ、お前、嘘をつく仕事で成功したんだってな」
「ああ、まあな」
ササキの答えは気のないものだった。
「お前ほど、嘘をつくのが上手い人間なんて日本中探してもいないんじゃないか?」
「それが、そうでもないんだ。俺なんか、嘘つきとしては本当に低レベルなんだ」
「でもお前、嘘で金持ちになったらしいじゃないか。……天才詐欺師だとか」
「まあ、詐欺師の中では嘘が上手い方だけどな」
「ほら、最高の嘘つき能力の持ち主じゃないか」
「お前ら、本当に何も知らないんだな。本当に実力のある嘘つきは政治家になるんだ。詐欺師なんて、政治家になれない中途半端な嘘つきのやる仕事さ」
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