2月19日午前4時7分ごろに、千葉県の野島崎沖で、海上自衛隊の最新イージス艦『あたご』と漁船の清徳丸が衝突した。同日午前、各メディアが一斉に報道した。漁船に乗っていた吉清さん親子は、真っ二つに折れた船体からは発見されなかったため、海上保安庁と海上自衛隊が周辺海域を引き続き捜索している。
なぜ衝突事故が起きたのか(ロイター) 事故当時、波風は弱く、霧も出ていなかったとされる。『あたご』の方では、通常監視体制をとっていたと言われている。詳しい衝突原因は2月19日16時現在、わかっていない。 私が調べた範囲では、野島崎沖では過去に何度か船舶の事故が起きている。この場所は、米軍空母も通過することがあるようで、1990年には、野島崎沖170キロの海上で、米空母ミッドウェーの爆発事故が起きたこともある。 なぜ事故が再び潜水艦事故が起きたのか? 今回の『あたご』の事故は海上自衛隊にとっては、1988年(昭和63年)7月23日の潜水艦『なだしお』事故のつらい記憶を繰り返さないためにも、起きてはならない事故だった。 潜水艦なだしおの事故以降、東京湾や浦賀水道などでは、衝突事故防止のために、海上自衛隊艦船が東京湾内を航行する際には、東京湾海上交通センターとの位置通報交換を行うようになった。残念ながら、その対策では不十分だったのではないだろうか。 野島崎沖など、過去の海上事故多発地点における事故防止対策が不十分だった可能性がなかったかどうか気になる点だ。昭和まで(1988年以前に)さかのぼると、なぜだか、野島崎沖は大きな事件や事故が何度もあった。 今後、大型イージス艦の見張り員の定数については、見直しを検討した方が良いのではないだろうか。 事故原因を究明し万全な再発防止策を 2003年(平成15年)だが、浦賀水道における衝突事故防止対策に関して、米軍原子力潜水艦の非協力性(通報しない事)が疑問とされたことがある(2003年5月27日、衆議院の国土交通委員会記録、国会会議録より一部引用)。 深谷海上保安庁長官:先生お尋ねの(米軍)原子力潜水艦につきましては、1万トン以下と思いますので通報の対象にはならないと御理解いただきたいと思います。 大森議員:(通報基準の1)巨大船あるいは総トン数1万トン以上の船舶に仮に原潜が該当しなくても、2番目の基準(総トン数が100トン以上であって、最大搭載人員が30人以上の船舶)には当然該当をする。 横須賀港湾、浦賀水道航路及び中ノ瀬航路は、大変危険な水域です。自衛隊艦船には適用して、米軍の艦船には適用しない、これは大変問題だと思うんですね。 この2003年の指摘以降、米軍原子力潜水艦について変化があったのかどうかは、あまり指摘する人もいないので、わかりづらく心配である。2重スタンダードを適用していては、完全な再発防止策にならないと、今は言っておきたい。 日本防衛の切り札と言われている最新鋭イージス艦が事故を避けられなかったのは遺憾だ。最後まで海上自衛隊と海上保安庁は救命捜索活動を続け、事故原因を明らかにして欲しい。 また、潜水艦なだしお事件の再発防止対策の実施後に、やれるだけの対策はやったという自己満足感が、政府や防衛の上層部に、あふれすぎていた側面も忘れてはならないのではないだろうか。 ■関連サイト 日本の重大海難(海難審判庁) 東京湾海上交通センター(海上保安庁) |