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イージス艦と漁船衝突 漁師の父子不明 南房総沖

2008年02月19日12時26分

 19日午前4時7分ごろ、千葉県南房総市の野島崎の南南西約40キロの太平洋で、海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」(艦長・舩渡健1等海佐、全長165メートル)が、千葉県勝浦市の新勝浦市漁協所属のマグロはえ縄漁船清徳丸(7トン、同15メートル)と衝突した。清徳丸は二つに分断され現場を漂流。乗り込んでいた同市川津の漁師吉清(きちせい)治夫さん(58)と長男哲大(てつひろ)さん(23)が行方不明となっており、第3管区海上保安本部(横浜市)や海自の艦船、ヘリコプターなどが捜索している。

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海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と衝突し、二つに折れた漁船清徳丸の船首部分=19日午前8時45分、千葉県・野島崎沖南南西約40キロで、本社ヘリから

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漁船清徳丸と衝突した海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」の船首部分。海面から上に傷状のものが見える=19日午前8時45分、千葉県・野島崎沖南南西約40キロで、本社ヘリから

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水面を漂う清徳丸の船首部分(手前)と自衛隊のイージス護衛艦「あたご」=19日午前8時54分、千葉県野島崎沖南南西約40キロで、本社ヘリから

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事故現場の地図

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清徳丸=第3管区海上保安本部提供

 自衛艦の関係した民間船の大破・沈没事故は、遊漁船の釣り客ら30人が死亡した88年7月の潜水艦「なだしお」の衝突事故以来。海自などによると、あたごの衝突個所は艦首付近。海上保安庁がヘリなどから確認したところ、清徳丸の左側面が大破し、真っ二つに分かれている状況から、同庁は、清徳丸の左側面に直角に近い角度で衝突した可能性があるとみている。海自は原因調査のため、事故調査委員会を設置した。3管は、業務上過失往来危険の疑いで近く舩渡艦長から事情を聴くとみられる。

 3管や海自などによると、同日午前4時23分ごろ、あたごから3管に「艦首部分が漁船にぶつかった。漁船が二つに割れた」と連絡があり、清徳丸はその後、水没した。あたごの乗組員がボートで付近を捜索したが、吉清さんらの姿はなかったという。

 漁船は船首部分はへさきを上にして大半が沈み、船尾部分も転覆して水面に浮かんでいる。3管の特殊救難隊が沈みかけた船内を捜索したが、2人を発見できなかった。3管は、衝突の衝撃で2人が操舵(そう・だ)室ごと海に投げ出された可能性もあるとみて調べている。

 海上衝突予防法では、航行する船舶は「常時適切な見張りをしなければならない」と定めており、船同士の航路が交差する場合、相手の船を右側に見る方に回避義務があるとされる。

 海自によると、あたご艦内は通常の当直体制だったといい、レーダーによる漁船の確認や回避行動などについては「調査中」としている。護衛艦が航行する際は通常、艦橋わきで見張り員らが目視し、レーダーでも周囲を警戒し、全長15メートルの漁船であれば確認できるはずだという。

 事故当時、現場海域の天候は曇りで、視界は20キロ。北よりの風約7メートルが吹いており、波の高さは0・5メートルだった。

 千葉県勝浦水産事務所によると、清徳丸など同漁協所属の漁船は、八丈島沖へメバチマグロやマカジキの漁に向かう途中だった。

 海自によると、あたごは昨年10月に京都府舞鶴市の海自舞鶴基地を出航。1月21〜25日に米ハワイでの対空ミサイル発射試験を終え、19日午前9時に神奈川県横須賀市の海自横須賀基地に着く予定で、現場海域を北上中だった。

 吉川栄治海上幕僚長は「このような事故を起こし、誠に遺憾であり、国民の皆様に深くおわび申し上げます。漁船乗員の捜索に全力を尽くしたい」との談話を出した。

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