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改正中国残留邦人支援法:転居報告義務なく、居住把握難しく /宮城

 

◇申請遅れで受給不能も

中国残留孤児らの生活支援を充実させた改正中国残留邦人支援法が、先月から段階的に施行されている。ただ、支援を受けるには申請が必要。自費で帰国した人や、国費帰国後に国内で引っ越した場合に住所を届け出る義務はないため、行政側も帰国者の居住状況を正確に把握できていないのが現状だ。申請が遅れれば、受給の開始時期もずれ込み、もらえるはずの年金や支援給付金がもらえなくなってしまう。県は「対象者は名乗り出てほしい」と支援策の周知に懸命だ。【伊藤絵理子】

支援策は▽老齢基礎年金の満額6万6000円支給▽生活保護に代わる支援給付金(最高月額8万円)支給▽日本語教育や通訳などの生活支援――が柱。塩釜市を例に、生活保護を受給している男性孤児(70代)と妻(60代)の世帯を想定して試算すると、老齢年金に加え支援給付金として計9万6710円が給付され、月の生活費は21万2710円(内職収入を含む)となる計算。生活保護受給時の生活費(月額12万6110円)より高額となる。

対象となるのは(1)1911年4月2日以降46年12月31日以前生まれ(2)永住帰国後1年以上日本に在住(3)老齢基礎年金制度創設(61年4月1日)以降に永住帰国――の条件すべてを満たす人。県社会福祉課が把握している県内在住の残留孤児らは91世帯(昨年12月1日現在)で、給付対象は90〜100人とみられる。

厚生労働省は既に、把握している対象者に対しては、支援内容と申請方法に関するパンフレットを送付。年金申請の受け付けは既に始まっており、認定されれば6月から受給できる。ただ、同省は帰国後の追跡調査を行っておらず、国内で転居した孤児らに対しては支援策を説明する手段がないという。

県によると、孤児や家族には中国から帰国したことを周囲に知られたくない人もおり、居住状況の報告を義務づけることはできず、正確な把握は難しいという。有効な周知方法が見つからないのが実情だ。同課の佐久間守主幹は「たとえ権利があっても、申請前にさかのぼって老齢基礎年金や支援給付金を受給することはできない。手続きに時間がかかるため、一日も早く申請してほしい」としている。

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■ことば

◇中国残留孤児

主に第二次世界大戦中の国策として中国東北部(旧満州)に移民した開拓団の家族のうち、45年8月9日の旧ソ連参戦による混乱などで幼くして肉親と引き離され、現地に残された日本人。政府は、終戦時に13歳以上だったり身元が判明していた人を「残留婦人等」として区別している。厚生労働省によると、05年3月現在の国費による永住帰国者は残留孤児2489人、残留婦人等3797人。



[毎日新聞 2008年2月4日]




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