ここから本文エリア 当直医ルポ(3)死亡を確認、家族にそっと頭を下げ午後6時50分、救急医(44)の胸ポケットのPHSが鳴った。手術や入院が必要な患者に対応する2次救急病院、兵庫県立西宮病院(西宮市)の「救急医療センター」。当直は研修医(26)と看護師3人を含む5人だ。
電話は救急隊から。「58歳男性。意識もうろう、半身まひ」。この症状は脳卒中の恐れがある。10分後、病院に着いた男性はぐったりしていた。近隣の4病院が受け入れに応じられず、119番から1時間がたっていた。 前夜の手術で疲れがにじむ脳外科医も駆けつけた。薬剤を注射して血圧を下げ、脳内出血を収束させる。手術せずに集中治療室(ICU)で経過をみた結果、何とか一命は取り留めた。 看護長は14日朝から勤務し、夜に当直。明けた15日も年度末に向けた事務作業に追われ、夜、この男性患者が運ばれてきたため居残った。38時間連続勤務。「ほとんど病院にいる習性がついてしまった。病気ですね」 再びPHSが鳴る。同10時50分、82歳の男性が心肺停止状態で運ばれてきた。心肺停止から50分。救急隊員が心臓マッサージを続けても、心拍は再開しない。 医師は、心電図を見せながら男性の家族らに静かな声で説明した。「心臓が動かないのがわかりますか」。同11時36分、死亡を確認。家族にそっと頭を下げた。 搬送された患者が死亡した場合、治療は終わっても仕事は終わらない。検視に来た警察官を受け入れ、看護師が亡くなった男性の体をていねいにふく。遺族のケアや一連の手続きを終えたのは、午前3時半だった。 「近隣病院の救急が縮小していけば、私たちも限界を超えてしまう」。救急医が疲労の色を濃くした。 PR情報救急存亡
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