ブリュッセル――国連暫定統治下にあるセルビア・コソボ自治州の独立問題で、欧州連合(EU)は16日、自治州への警察官など1800人規模の文民支援部隊の派遣を正式決定した。独立に備えた動きで、独立に反対するセルビアとロシアの反発を招くのは必至となっている。
同部隊派遣に関する法的文書を16日に発表した。コソボ自治州は、アルバニア系が人口約200万人のうち9割を占める。目指す独立の日時は明らかでないが、AP通信は17日にも宣言する可能性があると伝えた。
EUの文民支援部隊は独立後の自治州で、警察、司法や関税などの機関を創設、職員を育成する。同部隊は、国連コソボ暫定行政支援団に代わる役目を果たす。
セルビアとロシアは、国境線の画定は全当事国の合意があって可能との理由で独立に反対。セルビア政府は自治州の独立宣言があった場合、主権侵害の独立は無効とする方針を決めている。
アルバニア系はイスラム教徒が大半で、主にセルビア正教のセルビア人と宗教的な対立感情が根強い。コソボのセルビア人人口は全体の6%となっている。セルビアは1989年、コソボの自治権を制限し、独立運動に火を付けていた。アルバニア系武装組織とセルビア治安部隊の衝突が激化し、99年には北大西洋条約機構(NATO)軍がセルビアを中心に空爆。その後、国連コソボ暫定行政支援団の統治下に置かれた。
セルビアにとってコソボはセルビア正教の聖地で、一方的な独立宣言は国家の威信を損ねるとの反発もある。05年から国連が仲介を開始、07年には安保理に実質的独立を勧告したが、ロシアが反対、事態打開の方途がなくなっていた。ロシアには、コソボ自治州の行動を容認した場合、分離の武装闘争が長引くチェチェンなどの独立に道を開くとの思惑もある。
EU内には独立容認で反対論もあるが、英国、ドイツ、フランスは、米国と共に支持している。