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メタミドホス、根強い人気 禁止後も闇取引 中国農村部

2008年02月15日15時00分

 中国製冷凍ギョーザの中毒事件で、商品に混入されていたメタミドホス。中国では販売も使用も禁じられているが、ギョーザ製造元の「天洋食品」がある中国・石家荘市の郊外では、農民が今もメタミドホスを使っている。安い上に殺虫効果が高いため根強い人気があり、ヤミ取引されているのだという。

 工場から車で10分ほど走った同市郊外には、小麦やトウモロコシ畑が広がる。農家の40代の男性にメタミドホスがあるか尋ねると、中身が入ったメタミドホスのビン2本を見せてくれた。男性は「禁止されたのは知っているが、実は今も店で買える。1本7〜8元(1元は約15円)。殺虫効果が強く、多くの農家が使っている」と明かした。

 近くの別の農家も使っていた。水で薄め、噴霧器で葉の表面に吹き付ける。この農家の女性は「数時間後には、葉に付いた虫の大部分がばたばた死ぬ。一度使えば効果は数十日持つから、ほかの農薬より便利」。

 ただ、使うのは出荷する作物だけ。「家族が食べる野菜には絶対に使わない。中毒が怖いから」

 中国農業省は07年1月から、メタミドホスを含む5種類の毒性が高い有機リン系農薬の使用と販売を禁止した。「実験などに使われる以外に流通はない」(国家品質監督検査検疫総局幹部)

 だが、禁止されるまでの約30年、広く使われた。中国農薬工業協会によると、03〜05年の有機リン系農薬の生産量は約27万トン。うちメタミドホスは約18万トンで最大。在庫を抱えた業者がヤミで販売する事例も目立つ。

 石家荘市内の農業用品店の店員は「メタミドホスを求める農家は後を絶たない。都市部の店では置かないが、当局の目が届きにくい農村では話は別」と話す。

 未登録の携帯電話を使って格安で売る個人業者もある。高濃度のメタミドホスを1リットル二十数元で販売する江蘇省の業者に電話すると、「自社工場でひそかに製造している。今も注文は多い。商品が届くまでに摘発された際の罰金は客に負担してもらう」と話した。

 1月の農業省の発表によると、販売禁止以降、全国でメタミドホスを含む5種類の有機リン系農薬を875トン押収している。北京の大手農薬販売会社関係者は「値段が安く殺虫効果が高いメタミドホスを使ったことがある農民は、違法とわかっていても使わざるをえない。回収は進まないだろう」と指摘する。

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