禍だけを招くエイズ感染外国人の追放
政府がエイズに感染した駐韓外国人に対し「無条件的な追放政策」を貫き、感染者の人権を侵害し、感染事実をさらに隠すことになるという指摘が出ている。
疾病管理本部が国会保健福祉委員会所属のヨルリン・ウリ党の柳弼佑(ユ・ピル)議員に提出した資料によると、2000年から今年上半期まで国内で発見されたエイズ感染外国人は計8387人で、このうち329人が韓国から出国した。
今年に入ってからも、6月現在まで82人の外国人感染者が発見され、このうち54人が出国(調査中20人、所在不明3人など)したことが確認された。
このように感染者が半強制的に韓国を離れるほかなかった理由は、出入国管理法のためだ。この法はエイズに感染した外国人の入国を禁止し、韓国に滞在している外国人のエイズ感染事実が発見されれば、大韓民国から強制退去させることができると規定している。
国内の某大企業のグローバルマーケティング次長として勤務してきたフィンランド人のAさんは、昨年7月、健康総合検診の結果、エイズの感染事実が発見された。
ショックを受けたAさんは、既にスケジュールが決まっていた香港出張を終えた後、身の回りの整理をしようとしたが、再び韓国に戻ってくることはできなかった。空港でエイズ感染を理由に再入国が禁止されたためだ。
不法滞在外国人の場合、状況はさらに悪い。不法滞在者は居住地がはっきりしないか、連絡が取り難い場合が多く、会社を通じて感染事実の通達を受けることがあるからだ。
しかしエイズの感染事実は、本人にとっては死刑宣告も同様であり、極めてプライベートな情報であるため、法では秘密漏洩禁止条項を定め、第3者が感染事実を分からないようにしている。
出入国管理局関係者は「国民の健康が第一であり、エイズ感染者の隔離は国家の義務」とし、「法によって退去させる過程で不本意なことが起こる場合もあるが、それより感染者が韓国に残っている場合、国民に与えかねない保健上の危険を考慮しなければならない」と話した。
しかし、先進国の中、韓国のように無差別な退去措置をとる国はあまりない。退去政策によってかえって外国人が自発的なエイズ検査をためらい、感染事実を隠すことになるからだ。
近くの日本の場合、エイズに感染した外国人の入国制限はない。エイズ患者は国家保険金や自費で治療を受けられる。
英国、フランス、スイスといった国もエイズに感染した外国人に対して入国制限を取っていないだけでなく、統制、退去に関する法的根拠も設けていない。
柳議員は、「感染した外国人に応急手当も提供し、緊急時でなければ余裕も持って自発的な出国を促すよう、現行の出入国管理法の退去規定を改正する必要がある」とし、「国際的な人権侵害問題の発生を防ぐためにも、国連人権委員会のエイズ患者の出入国勧告を参考し、滞在外国人が安心して検査を受けられるべく国際NGO専門病院の設立も検討しなければならない」と述べた。
イ・ヨンス記者 hejsue@chosun.com
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