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さんま |
昔ね、うちの師匠(笑福亭松之助)
から言われて、
これは助かったなということがありまして。 |
糸井 |
はい。 |
さんま |
我々の弟子稼業というのは、
掃除をさせられるじゃないですか。
で、掃除をしていると師匠が、
「それ、楽しいか」って言うんです。
「いいえ」って答えると「そやろ」って。
「そういうのが楽しいわけがない」と、
おっしゃるんですね。 |
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糸井 |
うん、うん。 |
さんま |
そのときに、師匠に、
「掃除はどうしたら楽しいか考えろ」
って言われたんですけど、そこでしたねぇ。
あの、掃除なんて、
楽しくなるわけがないんですよ。ところが、
「楽しくなることを考えてることは楽しい」。
っていうところにね、
18歳のときに気づかせていただいたのが
非常に助かりましたね。 |
糸井 |
あーーー、それは、
いい師匠を得ましたねぇ。 |
さんま |
ええ、ええ。
これは、やっぱりものすごい助かりましたね。
とくに我々はお笑いやりたいから、
そこはスッと一所懸命できたんです。
けど、たぶん、そうじゃないふつうの人は、
「掃除は楽しくない」
というところでやめてしまう人が
多いんじゃないかと思うんですけど、
楽しくないものをどうすれば楽しいか、
ということを考えていくと楽しいんです。 |
糸井 |
それを考えてるときは、
もう、楽しいんですよね。 |
さんま |
はい。それやらない人、多いんですよ。
いまの若手とかにもね。 |
糸井 |
「楽しくなることを考えていることは楽しい」
それは、ハズレくじを引くどころか、
ハズレくじを引いて、
それをどう笑うかを考えてるわけですよね。 |
さんま |
そうそうそう。
そこにたどり着くことが、
さっきの夢と現実の話じゃないけど、
「入れ換える」ことなんですよ。 |
糸井 |
それを18のときに教えられたというのは、
やっぱり、大きなことですね。 |
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さんま |
そうなんです。 |
糸井 |
はぁーー。
あの、ぼくはときどき、
松之助師匠のブログを読んでるんです。
まず、あの歳でブログをはじめられたというのも
すごいことなんですけど。 |
さんま |
いや、すごい人ですよ(笑)。 |
糸井 |
それを読むと、師匠のほうも
「さんまさんに勉強させられた」
っていうことを書いてらっしゃるんですよ。 |
さんま |
あ、そうですか。 |
糸井 |
あの、ぼくは思うんですけど、
たぶん、さんまさんって、師匠にとっては
なんでもない子だったと思うんですよ。 |
さんま |
はいはいはい。 |
糸井 |
どんなにすごくったって、
噺家の芸としてではないわけですから。
でも、師匠は、そんなさんまさんのことを
「勉強になる」と思って見ていたみたいですね。 |
さんま |
(笑) |
糸井 |
やっぱり、
自分の問題として書いてるんですよ。
「さんまが、どうサボったか」
みたいなことでも。 |
さんま |
クワー(笑)。 |
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糸井 |
おもしろいというよりは、
この師弟は、おそろしいなと思った。 |
さんま |
そういうことばっかり、
師匠としゃべってましたからね。
18歳のときに。
だから、あのときのね、
録音テープがあったら欲しいですね。
18のぼくと、うちの師匠としゃべってるのを
ずっと回しとけばよかった。 |
糸井 |
師匠といま会ったら、
どういう話になるんですか。
いまだと、世間話になっちゃうんですか。 |
さんま |
いや、ずっと世間話ですよ。
いまも、そのときも世間話なんですよ。 |
糸井 |
ああ、いいですねぇ、それは。 |
さんま |
最近のやりとりは手紙なんですけどね。
なにかというと手紙を送ってくださるので。 |
糸井 |
いまも手紙が届くんですか。 |
さんま |
はい。すごい量ですよ、手紙は。 |
糸井 |
うわぁ、たまんないですねぇ。
そんな人がいるってすごいですね。 |
さんま |
いや、ぼくはもう、
ほんとうにすごい出会いを
させてもらったと思ってます。 |
糸井 |
すごいですね。
その人がいるかいないかで、
さんまさんの人生の軸があるかないかが‥‥。 |
さんま |
あ、もう完全に違いますね。 |
糸井 |
ですよね。
それなしで、いまと同じこと言ってても、
きっともっとふわふわしてますよね。 |
さんま |
はい。これはやっぱり、
出会ったっちゅうのが大きいというか、
うちの師匠をチョイスしたっちゅうのが、
ひとつの大きな縁ですし。 |
糸井 |
縁ですねぇ。 |
さんま |
けっきょく、たったひとり、
ぼくだけですから。弟子は。残ったのは。 |
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糸井 |
はぁーーー。 |
さんま |
あとはぜんぶやめましたから。
息子さんがふたりいらっしゃるんですけど、
ひとりは、バレリーナです。 |
糸井 |
バ、バレリーナ(笑)。 |
さんま |
バレリーナなんですよ(笑)。
あの、師匠の家の前にバレーの教室ができてね、
そこの先生がキレイな人で、
それを、ちいちゃいころから見てたから、
バレリーナになっただけのことなんです。
だから、たぶん、その教室ができなければ、
彼は落語家になってたと思うんですけど。 |
糸井 |
いい話だなぁ(笑)。 |
さんま |
すっごいですよねぇ。
そう考えると、やっぱり縁で。
ぼくがうちの師匠に出会ったのもね。 |
糸井 |
大きいですね。
その話は、とっても聞いててうれしいですね。
なんていうのかな、いろいろな話が
さんまさんからパァっと広がっていくときに、
真ん中に1本、大きな塔が立ちますね。
さんまさんという景色が安定するというか。 |
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さんま |
あ、そうですか(笑)。 |
糸井 |
うん。そういうのはまあ、
テレビで言う機会もないでしょうけど、 |
さんま |
ないですねぇ、ほんとに。ええ。 |
糸井 |
ぼくらはここで拾えて
本当によかったですね。うれしいです。 |
さんま |
あ、そうですか。
いやもう、そう言っていただけると。 |
糸井 |
こんな話ができてよかったです。
‥‥もう、ぼちぼち、時間もいっぱいですね。 |
さんま |
ああ、すいません。 |
糸井 |
「眠り」からはじまって、
だいぶん逸脱しましたけど。 |
さんま |
大丈夫ですかね。 |
糸井 |
いや、ぼくらは、あの、
このくらい広がったほうが
いいくらいだったんで。
それはきっと、読んでる人も。 |
さんま |
あ、そうですか(笑)。 |
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糸井 |
またもし機会があったら。 |
さんま |
いえいえ、もう、ぜひ。ほんとうに。 |
糸井 |
ありがとうございました。 |
さんま |
いえ、こちらこそ、
ありがとうございます。 |
糸井 |
ありがとうございました。 |
さんま |
いえいえ、もう。 |
糸井 |
こんなにキレイに終わっていいんだろうか。 |
さんま |
クワー(笑)。 |
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(さんまさんとのお話は、これで終わりです。
お読みいただき、どうもありがとうございました) |