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【産経抄】2月14日
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「死にたいと思う時があった/きみを道連れにして/私は死にたいと思う時があった/何故なのか/そのわけも知らずに」。谷川俊太郎さんの「父親は」は、こんな風に書き出されている。
▼詩人がいうように、父親は「愚か」で「混乱」し、「我まま」で「弱い」存在だ。だからといって、家族を道連れに死んでいいはずがない。東京都足立区で、機械修理・販売業を営む52歳の父親はなたで妻と母親を殺害し、二男の両手首を切断して自らの命を絶った。
▼近所でも評判の仲良し家族は、生活が苦しかったようだが、借地権を売って、お金が入る予定もあった。「家族を守らなければならなかったのに、どうしても、みんなを残しては…」との走り書きを残した父親の真意は何か。大学受験で外出して無事だった18歳の長男でさえ「トラブルは思い当たらない」という。
▼沖縄では、米海兵隊の2等軍曹(38)が女子中学生を暴行するという許し難い事件があった。14歳の少女が味わった恐怖と、心の傷の深さを思うと、胸が詰まる。平成7年、米海兵隊員3人が小学生の女児を暴行する事件が起こったとき、政府や沖縄県は強く再発防止を申し入れ、米軍側も綱紀粛正に努めたはずだった。
▼住民の間に広がっている米軍基地に対する怒りと不安は、よく理解できる。日米両当局は、事件が日本の安全保障に直結する米軍再編に影響を与えるようなことがないよう、対応に腐心してほしい。
▼それにしても、午後8時半に沖縄市の路上で犯人と遭い、2時間余り後に警察に保護されるまで、事件の経緯をたどって気になることがもうひとつある。少女を守るはずの家族の存在が、まったくといっていいぐらい見えてこないのは、どうしたことか。