黒いページ企画19


市民団体に踊らされる無知なマスコミ

さて、久々の電磁波問題関係のネタ。

いや、最近増えているんですよ。マスコミで、アンチ電磁波団体の言い分を取り上げて、「無秩序な基地局設置に待った!」とか「携帯基地局設置にルール作りを」なんつー感じの社説とかを出しているマスコミ。アンチ電磁波団体も売り込みに必死だなぁ、と思ったりするんですが、本当に簡単な試算さえせずに簡単にそれに踊らされるマスコミのバカさ加減を見ていると、呆れるのを通り越して怒りさえ覚えたりします。

そう、問題は、マスコミがこぞって「基地局」を槍玉に挙げていること。

そりゃ確かに、見た目巨大な威容の基地局を見ると不安になるというのも分かるんですが、最も簡単な試算もせずに、無条件で「基地局は危険だ」みたいに言われると、なんか、ちょっと知恵不足じゃない?と思うのが正直なところで。

前置きはこの辺にして、ものすごく簡単な、試算をやって見ましょう。いやほんと、これみりゃ、世の中のマスコミがいかにバカかってことがわかりますから。

まず、基地局と端末の出力。一般的に、基地局の出力は大きくても10Wくらい。複数搬送波を合算して20Wとかがせいぜいです。一方の端末は、最大でも1W程度、通常は500mWくらい。

で、ものすごく簡単な説明をすると、電波の強さ(エネルギー)の密度は距離の2乗に比例して弱くなります。結局、重要なのはこのエネルギーの密度です。なぜなら、どのような益であれ害であれ、電波は対象物にぶつかるときにはその投影面積に対して最大でその面積エネルギー密度のエネルギーを受け渡して影響を及ぼすからです。ちなみにそのエネルギーを受け渡す効率は周波数や周囲の誘電率分布などによって異なります。が、簡単のためにここでは単純に距離の2乗に反比例、としておきます。

で、ですね、後はその「距離」ですが、携帯電話の基地局鉄塔を見てもお分かりの通り、基地局の場合は人間が20mより近づくことはまれです。一方、端末に対しては使わない人でも1m以内に近づくことはしばしばあります(電車内など)。そこで、基地局の距離は20m、端末の距離は1mとしておくことにします。

とすると、まぁ単位自体には余り意味はありませんが、次のようになります。

基地局による電磁波エネルギー=10000mW / 20 m 2 = 250 mW/m2
端末機による電磁波エネルギー=500mW / 1 m2 = 500 mW/m2

ご覧の通り。莫大なエネルギーを出してるっぽい基地局、でも実は、1mの場所にある携帯電話端末が出している電磁波よりも影響は小さいんです。ここには、その他の条件はかかわってきません。なぜなら、基地局も端末も同じ周波数を使うし同じ通信方式を使うし、影響を受ける側は相手が何だろうと誘電率などは変わらないので同じように影響を受けるからです。そして、一般的には基地局は数百メートル離れているのが当たり前ですし、端末は50cm以内で使うのが当たり前です。仮に、基地局まで300m、端末まで0.5mとして計算すると、

基地局による電磁波エネルギー=10000mW / 300m 2 = 0.11 mW/m2
端末機による電磁波エネルギー=500mW / 0.5m 2 = 2000 mW/m2

この通り、2万倍の差があります。一般的に言って、電磁波による被害を考えるとき、基地局による影響は端末による影響の数万分の一以下。全く考慮する意味さえないのが現状。

にもかかわらず、痛いアンチ電磁波団体の方々やそれに踊らされるマスコミは、やたらと基地局を槍玉に挙げ、基地局撤去の運動を起こしたりします。

私は、電磁波による被害が絶対に無いとは言いません。ただ、上に挙げたような、全く科学的に間違った前提で運動している人々や報道しているマスコミを見ると、結局「マスコミは間違えない」と思っている人々を巻き込んだ壮大な勘違いの電磁波被害に関する常識がまかり通ってしまうのではないか、という方が気になるわけです。この一件に限らず、あらゆるところで勘違いを前提とした議論で科学的根拠も無く騒ぎ立てているだけのバカなアンチ電磁波団体の言っていることのほうが、技術者・科学者が言っていることより正しいという風潮が広まり、まともな意見を言う技術者・科学者が排斥される方向に向かってしまうのではないかと危惧するわけです。

ねぇ、マスコミさん、小学生程度の算数で分かることなんですから、報道する前に一度だけでも検算して見ましょうよ

世の中の技術者の大半はあなた方のことを馬鹿にしてると思いますよ、この件については。ホント。

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