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糸井 |
しかし、「笑い」っていうのは、
いわばもう、善と悪の境目だし、
天国と地獄の境目にある仕事だから、
まぁ、魔法使いみたいなもんですよね。 |
さんま |
まぁ、いいように言えば、
そうかもわかりませんね、はい。 |
糸井 |
それをずっと考えてきたさんまさんが、
お坊さんのようなことをおっしゃるのは
当たり前のことなのかもしれませんね。
やってることは、宗教と同じですから。 |
さんま |
そうかもわかりませんね。
そうすると、宗教ってなんやねん、
っていう話になるんですけど。
そうなると、たどり着くところは、
やっぱり「愛」っていう宗教が
いちばんすごいわけで、
けっきょくいっつもその、
「愛」っていう宗教にハマるじゃないですか。 |
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糸井 |
はいはい。 |
さんま |
みんなそうだと思うんですよ。
「愛」という宗教に行ってしまう。
そういう意味でいえばね、
所詮そんなもんだともいえる。
所詮、たいしたこと、誰も言ってない。 |
糸井 |
あの、仮に「愛」っていう、
こう、数字というか記号を当てはめると、
いちばん公式が解決しやすくなるってことで
回ってるわけですから。 |
さんま |
そうです、そうです。
そこへみんな逃げてる。
だから、みんな、グルグル回って生きていって、
誰も結論出さないままに死んでいくというね。 |
糸井 |
ああ、そのへんも浄土宗っぽい(笑)。 |
さんま |
あ、そうですか。
そこはぼく、あんまり
わかってないんですけども。 |
糸井 |
けっきょく、親鸞さんが言ってるのも、
ふつうの人を全員いっぺんに
救うものじゃないとダメだ、
みたいなことですからね。
修行している人だけ救われても
困っちゃうわけですから。 |
さんま |
ああ、それはそう。そうです。 |
糸井 |
そのへんにいるふつうのおじさんまで
オッケーにしないとダメだという。 |
さんま |
ええ。そうしないとダメです。
だから、「苦労は買ってでもせい」
なんていうけど、あんなことば、
早く、なくしたほうがいいですよね。 |
糸井 |
ああ、そうですね。
冗談じゃないですよね。 |
さんま |
冗談じゃないです。
「苦労は売ってでもやめろ」って思いますよ。 |
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糸井 |
(笑) |
さんま |
もう、なんていうんでしょう。
辞書から消したほうがいいようなことばが
たくさんありますよね。
「苦労」なんて消したほうがいいし、
「努力」っていうのも消したいし、
「幸せ」も消したほうがいいですよ。 |
糸井 |
「幸せ」はもう、消したじゃないですか。
ポン酢しょうゆをそこに置くことで。 |
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さんま |
ああ、そうですね(笑)。
あれはもう、20年前に消してたわけですね。
(さんまさんが1986年に出演した
キッコーマンのポン酢しょうゆのCMのこと。
ポン酢しょうゆを手にしたさんまさんが歌う
「♪しあわせってなんだっけ、なんだっけ、
ポン酢しょうゆのあるウチさ」
というCMソングが大きな話題になった) |
糸井 |
あれは、さんまさんが
ポン酢しょうゆを置いたことで
「キミたちの幸せはこれだから」って
決めちゃったわけでしょう?
幸せの「代理」を定義したというか。 |
さんま |
そうですねぇ(笑)。 |
糸井 |
ある意味、みんなの幸せが
あれで消されちゃったんですから。
「ポン酢しょうゆのあるウチさ」で。 |
さんま |
なるほどね(笑)。 |
糸井 |
あのCMは、広告屋としては
ほんとうにショックだったんですよ。
あれでなにかを変えられたといっても
いいくらいだった。 |
さんま |
あ、そうなんですか。
糸井さんが。へぇーーー。 |
糸井 |
もちろんあのことばをつくったのは
さんまさんじゃなかったんでしょうけど、
さんまさんというキャラクターがなければ
あの歌は絶対できなかったはずですから。 |
さんま |
そうですね。 |
糸井 |
みんなで鍋をするってことが
幸せなんですよっていう、
すごく大きなことを、
あっさりと伝えちゃったわけで。 |
さんま |
うん、だから、
「なにが幸せなのか」
っていうだけのことですからね。
「鍋」でいいんだったら、
「幸せ」なんていうことばは
なくしたほうが楽ですよ。 |
糸井 |
そういえば、ぼく、土鍋をつくったんですよ。
今度、送りますね。いいですよ。 |
さんま |
あ、そうですか。
いつもありがとうございます。 |
糸井 |
けっきょく、ぼくがやってるのも、
具体的に土鍋をつくってたほうが、
「幸せっていうのはな‥‥」って言うより
よっぽどいいなと思ってるからで。 |
さんま |
ああ、なるほどね。 |
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糸井 |
やみくもに世界平和を目指すよりも、
みんながあったかい気持ちになる土鍋を
苦労してつくったほうがいいんです。 |
さんま |
ああ、なるほど、なるほど。
たんに鍋をつくっただけでもね。 |
糸井 |
うん。そっちのうほうが、
ぼくは満足感があるんですよ。 |
さんま |
いや、そうでしょう、もう。
そんなんですよ、人の満足感って。
あのぅ、戦争止めるとか、世界平和はね、
どう考えてもぼくには無理です。 |
糸井 |
「なにから手をつけていいのか
わからない」から。 |
さんま |
そうそうそう(笑)。
どう考えたって、無理ですよ。
近所でもめてるおっさんもおるし、
車、運転するだけであんなにもめるんですから。
そんもん、絶対無理ですよ。 |
糸井 |
まさにそれは
「追いつかない」ってやつで。 |
さんま |
追いつかない。追いつかないんですよ。
で、そう言うとかならず、
「あきらめてどうすんのよ」
って言う人がいるんですけどね。 |
糸井 |
なぜかいま、女性口調でしたが。 |
さんま |
クワー(笑)。 |
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糸井 |
言われたことがあるんですね。 |
さんま |
いや、女性はね、言うんですよ、
「あきらめないで、あなた」とか。
たぶん、そういうふうにあきらめることを
女性は嫌いなんでしょうね。 |
糸井 |
でも、無理だと。 |
さんま |
無理です。ごめんなさい。 |
|
(続きます) |