第14回 生きてるだけで丸儲け
糸井 急に戻しますけど、
夢は見るほうですか。
さんま 夢は、少ないですねぇ。
糸井 少ないですか。
さんま はい。
ちっちゃいころはよく見ましたけど。
いまは、起きながら見るというか、
考えてるうちに見ているような、
そういう感じはありますね。
糸井 ああ。
さんま 自分の中でこう、いろいろと考えて、
悩むっていうことはないですけど、
なにかをこう、想像したりしてると、
夢のような気がしたり。
糸井 はぁはぁはぁ。
さんま これ、夢だったのか、
自分の考えだったのかっていう感じで。
たまに、ふつうに考えてても、
とんでもないところに飛ぶんですけど。
糸井 うん、うん。
さんま その、おかしなところに飛んだ考えが、
夢といえば夢じゃないかと
思いますけどね。はい。
糸井 もともと、夢って、
そういうものみたいですね。
さんま ああ、たぶん、そうだと思いますね。
ぼくなんかの場合、寝ようとするときに、
こう、ボーッと「明日、こうしよう」とか、
「こうなったらどうしよう」とか、
いろいろと考えてしまうので、
夢のようなものになってしまいますね。
糸井 もしも、自由に夢が見られるとしたら、
欲しいですか、そういう能力は。
さんま ああ、いらないですねえ。
糸井 いらないですか。
それはつまり、夢なんかどうでもいい?
さんま うーん‥‥
ポジティブな人はいらないんじゃないですかね。
ネガティブな人には必要なんでしょうけど。
糸井 ということは、
さんまさんにとっては、やっぱり、
起きてる時間のほうがおもしろいんですね。
さんま あのね、ロシアの哲学者かなんかがね、
「夢と現実を入れ替えろ」
って言ってるんですよ。
そうすれば人生楽になるっていう。
糸井 あああ。
さんま それはね、かなり、共感しますね。
糸井 夢を現実の自分に置き換える。
さんま 置き換えるだけで楽になるんですよ。
だから、ポジティブな人って、
いつも頭の中ではいいこと考えてて、
現実にイヤなことがあったって、
あの、べつにいいんですよ。
いいことばっかり考えて、
それを現実に置き換えたら、
すごい幸せな人生になれるという。
糸井 それはもう、宗教ですね。
さんま ああ、そうかもしれませんね。
これはでもね、簡単ですし、
みんなすべきですね。
糸井 ふーん‥‥あの、浄土宗の話ですけどね、
浄土宗が生まれた鎌倉時代っていうのは、
庶民にとって、ほんとうに
ひどい時代だったらしいんですよ。
食べるものがなくて、
みんな野垂れ死にしてるという。
で、当時の仏教というのは、
輪廻というのが信じられていて、
ようするに、死んだら生まれ変わるよ、
という考え方が基本的にあったんですね。
ところが、当時の庶民にとっては、
生まれ変わるのって、イヤなことなんですよ。
現実の世界がひどすぎるから。
そこで、浄土宗というものが出て
「死んでも生まれ変わらないよ」と言ったら、
みんながそれを大歓迎して、
いっぺんに広まっちゃったらしいんですよ。
さんま はぁーーー。
糸井 つまり、現実が悲しすぎる場合は、
そういうことになるんですね。
さんま あ、だから、同じですね。
糸井 そうなんです。
さんまさんが言ってることと。
だから、さんまさんはいま、
現実をコントロールできてるから、
おもしろいんでしょうね。
さんま あの、楽しいことを考えて、
楽しくしようとして、
ダメなときにもそうやって楽しめるって、
ものすごく大事です。
ものすごく大事で、楽です。
糸井 あああ、なるほど。
だって、ハズレもオッケーですもんね。
さんま そう思うんですよねぇ。
それは、あの、ぼくの経験というか、
さんざん、30何年も、世間やマスコミに
叩かれたり褒められたりをくり返して、
世間というのはこう取るのか、
ということを考えているうちに、
いつの間にかそういうふうに
なってしまったのかもしれませんけど。
糸井 そういうふうに考え続けて、
いろんなものを突き詰めていって、
最後の最後にさんまさんの手元に残る
たった1枚のカードっていうと、
もう、「人生、生きてるだけで丸儲け」
というところに行きますね。
さんま はい。
糸井 ありゃあ、すごいことばですよねえ。
さんま いえいえ(笑)。
まあ、でも、けっきょくそこに行きますね。
もう、すべての人が、もうね、
「服一枚着た時点で勝ち」なわけですから。
糸井 勝ちですよね(笑)。
さんま 勝ちなんですよ。
糸井 そうですよね。
さんま ええ。
糸井 ‥‥なんか、話してると、
ときどき、坊さんとしゃべってるような
気がするときが(笑)。
さんま ははははは。
  (続きます)

2008-02-06-WED

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN