韓国の次期大統領である李明博(イ・ミョンバク)前ソウル市長は、2007年に大統領候補として、北朝鮮の核廃棄、韓米両国の協力強化、エネルギー資源の確保などを骨子とした外交・安全保障構想を発表した。 それを李市長のイニシャルを取って、「MBドクトリン」と命名している。 彼は1代でのし上がった、敏腕実業家である。北朝鮮との緊張関係は認めつつも、冷徹な経済合理主義で、朝鮮半島の未来図を描いている。 朝鮮半島に「南北(インターコリアン)経済共同体」を創設するというのだ。その前提条件は、北朝鮮の「非核化」と、「経済開放」であるが、これは少しも困難ではない課題だ。 米国の、ネオコンではないクールな金融集団が何年か前から描いてきたシナリオが、実現のタイミングに差し掛かっているということである。 イラク戦争の失敗でブッシュ政権は、北朝鮮との「和解(rapprochement)」を演出しようとしている。中国とも打ち合わせ済みだろう。 ところが日本は蚊帳の外だ。2006年からのアメリカの方針転換にも気付かない、鈍感で無能な政権と外務省の責任である。マスコミも同罪と言えようか。 李明博氏は、北朝鮮に「経済改革コンサルタント」を送り込んで、数カ所の経済特区をつくり、また、南北の境界線の西の河口に人工島を造って、そこに韓国の企業を誘致し、北の安い労働力を使って製品を作り、輸出して、北朝鮮のGDPを飛躍的に向上させると言っている。 ヨーロッパのいくつもの国が、以前から北朝鮮と国交を結んでいるが、アメリカが「北」を悪魔よばわりしていたので、おおっぴらに「投資」はできなかったが、情勢はすっかり変化した。 韓国としては、白いトンビに油揚げをさらわれまいと、早々に具体的な経済援助プランをぶち上げたわけだ。そこでは「日本からの資金」もしっかり期待されている。 しかし、日本には、独自の戦略が何も無い。いずれ、バスに乗り遅れまいと、運転手の言いなりに、高い運賃を払って、慌ててバスに飛び乗ることになるのだろう。無能な政府を持った日本国民は、いい面の皮だ。 ■関連リンク |