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中国残留孤児支援 「帰化」戸籍の訂正できず

1月22日(火)

 中国残留邦人に対する新たな支援策をめぐって、厚生労働省と法務省は21日までに、日本国籍を「帰化」手続きで取得した人の戸籍の訂正は行わないと決めた。手続きした人も満額受給できることになった国民年金(老齢基礎年金)の4月からの支給に間に合わせるためという。ただ、対象者の中には戸籍からの「帰化」の抹消を訴えて司法判断を求める人も出てきそうだ。

 永住帰国した残留邦人の多くは、日本国籍があったとみなされる「就籍」手続きで国籍を回復した。しかし、詳しい事情が分からぬまま帰化扱いとなった人が、厚労省の把握だけでも全国に130人余いる。同省は該当者に近く書類を送付し、「帰化」とされた簡単な経緯を書いて提出してもらう考えだ。

 帰化の場合、それ以前は外国籍とみなされ、帰国するまでの保険料を国が肩代わりして納めることができず、支援策の柱の一つである国民年金の満額支給ができなくなる恐れがあった。このため、本人の申請に基づいて、国が特例措置の追納手続きを取ることで満額支給することになった。

 ただ、4月からの支給には、3月中の手続きが必要。時間のかかる戸籍の訂正手続きをしていると、3月中に手続きが終わらない人が出てくるという。

 厚労省は、通常よりも簡単な手続きで戸籍を訂正する方法なども法務省と協議してきたが、方針を変更。昨年12月下旬、残留孤児訴訟の全国の弁護団を集め年金について説明した会議で、伝えられた。

 戸籍を訂正しない決定に、「帰化」で日本国籍を取得した残留婦人の中島千鶴さん(75)=飯田市=は「本当に悲しい」と話す。

 1949年に中国人男性と結婚し、しばらくは日本国籍だったが、更新手続きに時間も費用もかかり、何度も男性の家族から指摘され、仕方なく中国籍を取得した。帰国後の91年に手続きをしたところ、よく分からぬうちに「帰化」とされた。「支援者と相談し、何としても帰化扱いを変えたい」と訴える。

 長野市松代出身で東京在住の残留孤児、紅谷寅夫さん(70)も納得できぬまま「帰化」とされた一人。「ずっと気になっている大きな問題。裁判も辞さない」と言う。

 厚労省は「戸籍を訂正した方が納得してもらえるとは思う。ただ、4月からの満額受給に間に合わない人が出る方がより問題だと判断した」と説明。法務省によると、戸籍の訂正は、裁判所の許可ですむのか、訴訟が必要になるか、まだ結論が出ていないという。