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腰砕けた民主党 喚問カードは当面封印?
民主党が、額賀福志郎財務相の証人喚問を見送ったことで、小沢一郎代表の辞任騒動を収拾して国会での攻勢に転じていた同党は再び躓(つまず)いた。
腰砕けになった民主党に対して、政府・与党幹部は30日、「第2の偽メール事件」「証人喚問の時間がいらなくなった分を、新テロ対策特別措置法の審議に回せばいい」と容赦ない攻撃を早くも浴びせている。
民主党が見送りを決めたのは、野党共闘の足並みが崩れるのを恐れたことが最大の理由だ。民主党は参院第1党だが、共産、社民、国民新の各野党の協力があって初めて、参院で過半数の力を行使できる。実際、参院財政金融委員会での27日の野党単独の喚問議決には、ただ1人の共産党議員の賛成が必要だった。
喚問すれば、衆院でも与党が野党関係者の喚問を一方的に議決する“仁義なき戦い”になる−。こう懸念する声は共産、社民、国民新の各党に当初からあった。共産党は29日、「(野党単独議決は)間違っていた。証人喚問は全会一致を原則とすべきだ」(市田忠義書記局長)と異例の方針転換を表明。額賀氏と一緒に喚問予定の前防衛事務次官の守屋武昌容疑者が28日に逮捕されたことと重なり、民主党内の慎重論を強めた。
「泣く子を引きずるように共産党理事を(喚問議決の場に)連れて行った。責任を感じる」
野党共闘を重視せざるを得ない民主党国対幹部は30日、こう漏らした。
民主党幹部らは同日、「喚問議決の手続きに瑕疵(かし)はない」(鳩山氏)、「全会一致のルールに拘束されるなら、国政調査権は活性化されない」(簗瀬進参院国対委員長)と強調した。全会一致を喚問の前提条件にすると今後、証人喚問カードが使えなくなるためだが、結局、今回の見送り劇で、自ら喚問を「容易に使えない切り札」(民主党筋)にしてしまった。民主党には、創価学会幹部の喚問を公明党牽制(けんせい)に使う意見もあったが、公明党からは「全会一致が原則ならとても無理」(幹部)との声が出ている。
昨年の「偽メール問題」の後遺症が、癒えていないことも露呈した。他の野党からは「喚問で、何も新しい話は出てこなかったということにならないか」(亀井久興国民新党幹事長)などと、民主党の強硬路線に距離を置いた発言もあった。民主党の調査能力への不信が根強いことも表面化させてしまった。
民主党は、28日の守屋容疑者逮捕から喚問見送りまで丸2日も党内調整に時間を費やし、自ら傷口を広げた。党幹部の1人は喚問見送りが決まった後、「逮捕のケースを検討していなかった」と、党執行部の見通しの甘さを認めた。
(佐々木美恵)