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日教組、全体集会開催を初めて中止へ ホテルが使用拒否

2008年02月02日03時06分

 日本教職員組合(日教組)の教育研究全国集会をめぐり、グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)が会場の使用を拒んでいた問題で、日教組は1日、使用できるめどが立たないとして、2日午前の全体集会を中止することを決めた。1951年に始まった日教組教研集会で、全体集会が開かれないのは初めて。

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グランドプリンスホテル新高輪との話し合いを終え、記者の質問に答える荘司英夫日教組副委員長=1日午前8時53分、東京都港区で

 東京地裁、高裁が使用を認める決定を出しているにもかかわらずホテル側が従わず、開催できない異例の事態となった。ホテル側の企業倫理が問われるのは必至だ。

 記者会見した日教組の森越康雄委員長は「法律を守るということさえできないのか」と話し、民事訴訟での損害賠償請求だけでなく、行政処分や国政の場などあらゆる手段で責任を追及する方針を明らかにした。

 隣接するグランドプリンスホテル高輪で1日夜に予定していた前夜祭も、会場使用を拒否されたため中止した。2日午後から都内各所で予定されている分科会は予定通り開催する。

 全体集会は教研集会の冒頭に毎回開かれ、今年も約2000人が参加する予定だった。昨年3月に日教組が旅行会社を通じて申し込み、5月に契約が成立。11月になってホテル側が「右翼の抗議活動で利用客や周辺に迷惑がかかる」ことを理由に契約解除を通告した。

 日教組は12月、東京地裁に会場使用の仮処分を申し立て、認められた。これに対しホテル側は保全異議申し立てや抗告をしたが、いずれも認められなかった。しかし、使用拒否の姿勢を崩さなかった。

 ■街宣警戒、司法を無視 ホテル

 1日朝、日教組役員ら12人がホテルに入った。契約では、この時間から会場を予約していた。「使わせてほしい。高裁の決定も守らないのか」という役員らに、ホテル側は「使用できない」と繰り返した。日教組側が引き揚げた直後、ホテルが新たに会場を貸した企業の就職説明会への参加者が続々と入り始めた。

 数千人が集まる全体集会の会場には、これまで公共施設があてられてきた。今回、日教組の依頼した旅行会社が会場を探し、グランドプリンスホテル新高輪が契約に応じた。

 だが、その選択が招いたのは予想外の結果だった。日教組の森越康雄委員長は1日の会見で「同じ会場で自民党が大会を開き、右翼が押し寄せている。福田首相も出席し、大変な警備が必要だ。そこにも貸しているのに」と批判。「司法よりも企業の論理を優先する判断で、この国の自由は死んだという状況にさえなってしまう」と語った。

 これに対し、ホテルの多々良嘉浩・営業戦略室マネジャーは「お客様の安全を第一に考えると、お受けできない」と話す。

 昨年3月に申し込みがあった時点で「07年の集会で街頭宣伝車が来たが警察署に届け出て問題なく実施している」と説明を受けていた。だが、10月になって前回の開催地である大分に調査に行き、分かったのは、街宣車が100台以上集まっていたという想定以上の状況だった。そこで、契約解除を通告。地裁と高裁の判断を経ても考えを変えなかった。

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